2011 Fiscal Year Annual Research Report
アブラムシおよびその他昆虫における無性生殖種の進化的起源:交雑起源説の検証
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23370037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋元 信一 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30175161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片倉 晴雄 北海道大学, 名誉教授 (40113542)
吉澤 和徳 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (10322843)
小林 憲生 埼玉県立大学, 共通教育科, 准教授 (00400036)
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Keywords | 単為生殖 / 系統 / 多様性 / 適応度 / 染色体 / 適応度 |
Research Abstract |
エンドウヒゲナガアブラムシおよびクワヒョウタンゾウムシを用いた無性生殖集団の起源に関して調査を行った。 エンドウヒゲナガアブラムシ無性生殖クローンに関して、核のelongation factor 1αの対立遺伝子をクローニングし、配列を解析したところ、2つの対立遺伝子には大きな分化が認められた。これらの対立遺伝子は、2つの異なる有性タイプの寄主レースに固有に見いだされる遺伝子であった。この結果から、無性生殖集団の一部のクローンは、2つの寄主レースの交雑から起源したことが推測された。 有性生殖が無性生殖に対して有利性を持つのであれば、無性生殖を継続することはコストが伴うことが予想される。アブラムシが無性生殖を継続することの適応的意義を探るために、長期間無性生殖を強制してきた2つのクローンを掛け合わせ、子孫クローンを育て、親クローンと子クローン間で産子数を比較した。この結果、すべての子クローンの平均産子数は親クローンの平均産子数を上回った。この結果は、有性生殖に伴う遺伝的組換え自体が有害遺伝子を除去する上で重要な働きをすることを実証した。 クワヒョウタンゾウムシに関して、ミトコンドリアND2遺伝子の一部配列(633bp)を用いた遺伝子解析を行った。得られた配列情報から最尤系統樹を構築したところ、両性生殖系統と単為生殖系統は高い信頼性で互いに単系統であった。両性生殖系統と単為生殖系統の分化は鮮新世のおよそ410万年前、それぞれの系統内の遺伝的多様化は更新世後期のおよそ120万年前以降と推定された。一方、核のITS2の一部配列(357-374bp含インデル)を用いた遺伝子解析を行ったところ、両性型と単為型の間に明瞭な遺伝的分化は見られなかった。こうした結果から、クワヒョウタンゾウムシに関しては交雑による起源ではなく、異なる要因が関与したことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい遺伝的手法による解析がうまく進み、エンドウヒゲナガアブラムシに関しては多くの無性生殖クローンにおいて交雑起源を確証できた。さらに、ヨーロッパ産、あるいは南米産の無性生殖クローンが得られたため、この材料に関しても分析を進めている。本手法を今後、他の無性生殖種にも適用することを試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
できるだけ多くの無性生殖生物に対してこの手法を適用する。技術的な問題は解決されているために、今後は、効率よく分析するクローン数を増やすことがカギとなる。さらにこれまで蓄積してきたデータを、今年中に投稿することを目指す。
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Research Products
(3 results)