2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23370038
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
DICK Matthew.H 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80374205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柁原 宏 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30360895)
小亀 一弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80215219)
加藤 徹 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80374198)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 津軽海峡 / 海産無脊椎動物 / サンゴモ / 分岐障壁 / 系統地理学 |
Research Abstract |
本研究課題は、津軽海峡の周囲に生息するさまざまな海洋生物を標的種とし、これらの集団構造を比較調査する事により、海峡がどのようにして分散障壁として作用しているのかを解明することを目的とする。 標的種のうち、苔虫動物Cauloramphus magnusについては2地点から55個体を追加し、合計306個体のCOI配列を決定した。これらの配列を用いて系統地理的解析を行った結果、北日本のC. magnus集団では3つの系統が認識され、それらの間には12-28%という比較的大きな遺伝距離が検出された。動吻動物については、遺伝的に異なるEchinoderes sensibilisとE. ezoensisの2種が認識され、津軽海峡を境界にそれぞれ本州と北海道を中心に分布することが確認された。等脚類については、Idotea ochotensisでは98個体、Cleantiella isopusでは100個体を追加採集し、それぞれ194個体および168個体のCOI配列を決定した。その結果、I. ochotensisでは地域間における集団の複雑な分化が認められ、一方、C. isopusでは集団サイズの増大が示唆された。石灰藻類Corallina piluliferaについては、304個体を追加採集し、251個体のCOI配列と48個体のITS配列を決定した。その結果、これらは形態の差異とは対応しない5つのグループに分かれることが確認された。蔓脚類Chthamalus challengeriおよびC. dalliについては、今年度よりCOI配列の決定を開始した。これら2種のうち、一方は169個体のCOI配列を、もう一方は34個体のCOI配列をそれぞれ決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度から標的としていた12種については、すでに7000個体を超える標本が採集されており、今年度新規に追加した標的種のために多少の追加採集は行うとしても、すでに必要十分な標本が得られている。また解析の状況としては、すでに計画の3600配列の70%まで達成しており、多くの種でCOI配列の増幅が行なわれ、ITS領域の解析に必要な新規プライマーの設計も完了している。従って、現在までの達成度については、当初の計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで標的種としてきた10分類群12種について、現在までほぼ十分な数の個体を採集することができた。従って、今後はこれらの標本を対象に、塩基配列決定および集団遺伝学的解析の作業に集中するとともに、採集個体が少ない種については引き続き追加採集を行う。 また、いくかの標的種ではCOI配列の決定が順調に進んでおり、一部の種ではすでにITS領域の増幅にも成功していることから、今後も作業を継続する。さらに、すでに集団遺伝学的解析の作業を終えている動吻動物、棘皮動物、環形動物、星口動物については、得られた配列情報をもとに、分散様式の異なる種間で遺伝構造を比較する。これにより、津軽海峡の分散障壁としての効果を総合的に検討する。
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Research Products
(18 results)