2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23370051
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今田 勝巳 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40346143)
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Keywords | 分子機械 / 走化性センサー / 膜タンパク質 / 生体分子 |
Research Abstract |
外部情報の取得は、細胞が生きていく上で欠かせない。細菌の走化性センサーは広いダイナミックレンジを持ち、刺激物質濃度の時間変化、信号を記憶する仕組みを有するインテリジェントセンサーであり、温度・pH等も感知する多機能センサーである。本研究では、膜貫通領域を含むセンサー分子の構造、異なるリガンドを認識するセンサー分子の構造を解明すると共に、様々な変異体センサーのリガンド結合を直接測定し、リガンド結合、信号発生、細胞内への信号伝達の機構を原子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度の研究成果は以下の通りである。 Tcpリガンド結合部の結晶構造解析 Tcpリガンド結合部の解析が大きく進展した。結晶化に成功したTcpリガンド結合ドメイン-クエン酸複合体のX線結晶構造解析を行い、空間群P43212の結晶から1.5A分解能の回折強度データを収集した。Tarの構造を用いた分子置換により構造解析を行い、現在精密化を行っている。Tcpは、クエン酸を認識し適応した後、さらに亜鉛に対する認識応答を行うことが知られている。結晶化母液に亜鉛イオンを含んでいたため、亜鉛の吸収端の前後で回折測定を行うことで、Tcpに結合した亜鉛の位置を同定した。亜鉛はTcp1分子に4個結合しており、うち一つは基質クエン酸に配位していた。この構造から、Tcpの複雑な刺激応答の分子機構を解明する手がかりが得られた。 ・変異型受容体と刺激物質の結合解離の直接測定 TsrとTarはNiやLeuに対して異なる忌避応答を示す。TsrとTarのキメラ受容体の等温滴定熱測定から、Ni結合領域を絞ることができた。 ・細菌走化性受容体の精製 大腸菌由来Tarの精製法の改良を行っているが、最終生成物にTar切断物が混入するため、さらなる条件検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的は4月研究開始を想定して作成していたが、交付内定が行われたのが秋であり、研究開始が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Tcp受容体結合部の構造が明らかになったので、構造情報に基づいて作成した変異体の等温滴定熱測定を進め、クエン酸の結合と2価イオンの結合による信号発生のしくみを明らかにする。 また、TsrとTarで忌避応答が異なることが新たに分かり,変異体実験から応答に関わる領域が同定されてきた。そこで、これらの構造解析を進め、同じ分子が走化性応答と忌避応答の両方の情報を発信するメカニズムの解明を進める。膜貫通領域を含む試料については、新たなコンストラクトを作成する。
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Research Products
(2 results)