2012 Fiscal Year Annual Research Report
X線構造に基づくガレクチンと糖鎖プロセッシング酵素のヒト型分枝糖鎖認識機構の解明
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23370054
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
神鳥 成弘 香川大学, 総合生命科学研究センター, 教授 (00262246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 望 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10145047)
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305)
中北 慎一 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (40314356)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線結晶解析 / 糖鎖結合タンパク質 / 糖鎖 / ガレクチン / ウェルシュ菌 / ボツリヌス菌 / ペプチドグリカン / ヘマグルチニン |
Research Abstract |
糖鎖は,アレルギー反応やウィルス・細菌感染等に深く関与している。本研究の目的は,糖鎖と糖鎖結合タンパク質との複合体のX線結晶解析を行うことにより,糖鎖結合タンパク質による糖鎖認識機構を分子レベルで解明することである。平成24年度は以下の3つの課題についての研究実績を報告する。 (1) ガレクチン・糖鎖複合体のX線結晶解析: ガレクチン8および9は,2つの異なる糖鎖結合ドメインが20から30アミノ酸のリンカーによりつなげられた特有の構造を持っている。リンカー部分を短くした安定型変異体も野生型と同様の生理活性を持つことから,2つの糖鎖結合ドメインは,リンカーの長さに関わらず,ドメイン間相互作用による安定な相対位置があると考えられる。2つのドメインを持つ安定型ガレクチン8・糖鎖複合体のX線結晶解析に成功し,2つのドメインの相対位置および糖鎖認識機構について解明した。また,安定型ガレクチン9についてもX線結晶解析を進めている。 (2) 病原性細菌糖鎖結合タンパク質・糖鎖複合体のX線結晶解析: ボツリヌス菌毒素複合体中には複数の糖鎖結合タンパク質がある。その1つ(HA70)について,シアリル化糖鎖複合体のX線結晶解析およびマイクロアレイ解析によりシアリル化糖鎖認識機構を明らかにした。また,ウェルシュ菌由来糖鎖プロセッシング酵素については,N-アセチルグルコサミニダーゼおよびガラクトシダーゼの結晶を得ることに成功しており,X線結晶解析に適した結晶化条件を探索中である。 (3) ウェルシュ菌細胞壁分解酵素のX線結晶解析: ウェルシュ菌を研究する中で,ウェルシュ菌の細胞壁を特異的に分解するファージ由来の酵素(PSM)が発見された。PSM・単糖複合体のX線結晶解析に成功し,現在,PSMの立体構造と細胞壁認識機構およびペプチドグリカン加水分解機構との関係について,詳細な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ガレクチン・糖鎖複合体のX線結晶解析」については,2つのドメインを持つ安定型ガレクチン8・糖鎖複合体のX線結晶解析により,シアリル化糖鎖認識機構を明らかにし,学術誌(FEBS J.)に報告することができた。本論文では,ガレクチン8のオリゴマー化の可能性にも言及しており,これを支持するデータとして,安定型ガレクチン8の好中球細胞接着活性測定結果も報告している。2つのドメインを持つ安定型ガレクチン9についてもX線結晶解析が進展しており,学会発表を予定している。 「病原性細菌糖鎖結合タンパク質・糖鎖複合体のX線結晶解析」については,ボツリヌス菌毒素複合体中にある糖鎖結合タンパク質(HA70)・シアリル化糖鎖複合体のX線結晶解析,およびHA70のマイクロアレイ解析により,シアリル化糖鎖認識機構を明らかにし,学術誌(FEBS Letters)に報告することができた。ウェルシュ菌糖鎖プロセッシング酵素に関する研究については,X線結晶解析には至っていないが,いくつかの酵素については結晶を得ることに成功している。 「ウェルシュ菌細胞壁分解酵素のX線結晶解析」については,比較的高分解能のX線データ(1オングストローム分解能)が得られており,PSMの立体構造と細胞壁認識機構およびペプチドグリカン加水分解機構解明に向けた進展が期待される。現在,学術誌への論文作成に着手している。 総じて,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ガレクチンファミリータンパク質については,引き続き,糖鎖複合体のX線結晶解析,変異タンパク質の生理活性測定・糖鎖親和性測定を行い,糖鎖認識機構について新たな知見を得る。特にガレクチン9は,2つの糖鎖結合ドメインを持つことが分枝糖鎖認識に極めて重要であるので,2つの異なる糖鎖結合ドメインを持つガレクチン9と糖鎖との複合体のX線結晶解析に力を注ぎたい。また,ガレクチン9のターゲット糖タンパク質であるTim-3について,均一なN-結合型糖鎖を付加させた状態での化学合成に成功している。付加できた糖鎖は短いものであるが,この合成Tim-3とガレクチン9との複合体のX線結晶解析に着手したい。 ボツリヌス菌の毒素複合体中には3つの糖鎖結合タンパク質(HA17,HA33,HA70)がある。前年度までにHA70とシアリル化糖鎖複合体のX線結晶解析については報告しているので,今年度はHA33について研究を進めていく。ウェルシュ菌糖鎖プロセッシング酵素は, N-アセチルグルコサミニダーゼおよびガラクトシダーゼの結晶を得ることに成功しており,今年度は,これらについて集中的に実験を進めていく。状況によっては,糖鎖結合ドメインと触媒ドメインを分けて結晶化することも検討したい。 ウェルシュ菌細胞壁特異的分解酵素(PSM)については,その糖鎖複合体あるいはペプチドグリカン成分との複合体のX線結晶解析を進め,糖鎖とペプチドによる分枝・架橋構造を持つ細菌細胞壁ペプチドグリカンの認識機構解明に向けた構造基盤を得ていく。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Self-association of the galectin-9 C-terminal domain via the opposite surface of the sugar-binding site2013
Author(s)
Nonaka, Y., Ogawa, T., Oomizu, S., Nakakita, S., Nishi, N., Kamitori, S., Hirashima, M. & Nakamura, T
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Journal Title
J. Biochem
Volume: 153
Pages: 463-471
DOI
Peer Reviewed
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