2012 Fiscal Year Annual Research Report
新合成不良蛋白質のサーベイランスと選択的分解の意義
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23370063
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川原 裕之 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70291151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 直人 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (40610564)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ユビキチン / プロテアソーム / タンパク質品質管理 / BAG6 / BAT3 / タンパク質分解 / 抗原提示 / アグリソーム |
Research Abstract |
新合成不良蛋白質は、通常、生成した直後にその異常性が認識され分解系にターゲットされるが、不良蛋白質の認識・分解がうまくいかないと、その毒性から病理的細胞死が誘導される。また、新合成不良蛋白質の分解産物が、MHC(主要組織適合抗原複合体)クラスIに提示される抗原ペプチドの供給源として重要であることも報告されている。このように新合成不良蛋白質の認識・代謝系は免疫応答や神経変性疾患などの防御に極めて重要であるが、その分子メカニズムはこれまで充分明らかにされてはいなかった。 我々は最近、BAG6が新合成不良蛋白質を特異的に認識して、これらをプロテアソーム系にリクルートすることを初めて明らかにした。BAG6を抑圧した細胞では、新合成不良蛋白質の代謝に失敗し高率で細胞死が誘導される。一方、MHCクラスI提示される抗原ペプチドは、新合成不良蛋白質の分解産物に由来する。我々は、本申請実験によって、MHCクラスIへの抗原ペプチド供給にBAG6が必須の役割を果たすことを見いだし、免疫系におけるBAG6 (別名BAT3)の必須機能を初めて解明した。 本申請研究では、これまでの我々の成果を基盤に、BAG6が新合成不良蛋白質を特異的に認識する機構を生化学的に解明した。さらに免疫・神経組織に高発現するBAG6の特徴をふまえ、遺伝子機能抑圧細胞の作成を介してBAG6依存的代謝経路の生理的意義を解明し、得られた知見を細胞内不良蛋白質の新規サーベイランス機構としてその意義を提案することを目的として今後の研究を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、BAG6が「新合成不良タンパク質」を認識するために必要なドメインを絞り込みをほぼ完了した。さらに、BAG6が基質を適切に処理するために必要なパートナー分子を質量分析の手法で100種類以上同定した。これらのうちの代表的なものをピックアップして、遺伝子発現の抑圧実験などを行ったところ、新合成不良タンパク質代謝が安定化することを新しく発見した。また、これまで知られていたBAG6の標的蛋白質群である「新合成不良タンパク質」に加えて、膜蛋白質のアッセンブリと品質管理にBAG6が必須の役割を果たす事を初めて解明した。抗原提示されるモデル膜タンパク質として新しくIL-2レセプターを取り上げ、抗原提示の定量的評価系の作出も進めた。以上の成果は、当初我々が想定したものを大きく超えており、充分な成果を挙げられたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の研究成果(J. Cell Biol. 2010)は、多くの一流ジャーナルに引用され、世界的な注目を集めている状況である。本申請研究で得られた成果を速やかに発表し、世界に問うことを急ぎたい。また、我々が見出した新合成不良タンパク質の代謝システムは、一群の膜タンパク質(TAタンパク質)の小胞体膜アッセンブリにも必須であることが明らかになりつつある。今後、リボソームにて新合成されたポリペプチドが細胞内で機能し、生命を支える仕組みを解明していきたいと考えている。
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Research Products
(5 results)