2011 Fiscal Year Annual Research Report
構造ダイナミクスに基くG蛋白質共役型受容体の活性化メカニズムの解析
Project/Area Number |
23370070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今元 泰 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80263200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七田 芳則 京都大学, 理学研究科, 教授 (60127090)
山下 高廣 京都大学, 理学研究科, 助教 (50378535)
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Keywords | ロドプシン / 赤外分光 / X線散乱 / 平衡 / 構造変化 |
Research Abstract |
代表的なG蛋白質共役型受容体(GPCR)であるロドプシンは、光を吸収すると構造変化を起こし、G蛋白質を活性化する構造を獲得する。本計画では、ロドプシンを含めたGPCRはリガンドが結合していなくてもその構造ダイナミクスの中に潜在的に活性構造をとり得ると仮定し、その活性化メカニズムを構造平衡や構造揺らぎなどの観点から明らかにすることを目的としている。23年度の成果は以下のとおりである。 (1)数10~数100ミリ秒の時間領域の構造ダイナミクスを解析するため、波長可変レーザーを現有の高速CCD紫外可視分光光度計に同調させ、時分割測定の測定系を構築した。 (2)膜試料はX線散乱測定には適さないため、従来の研究では界面活性剤で可溶化した試料を用いてきたが、界面活性剤のミセルからの散乱が測定の妨げとなり、測定精度をあげることが困難であった。そこで、ナノディスク試料を用い、SPring-8で高角領域の散乱を精度よく測定したところ、ヘリックスの再配置による構造変化を直接観測することに成功した。 (3)ロドプシンの細胞内側表面(C末端部)にあるシステイン残基(Cys316)は、蛍光色素のAlexa594やAlexa647で特異的にラベルできる。この蛍光ラベルの蛍光強度は、メタIIでは暗状態やメタIと比較して20%程度増加するので、一分子計測によって蛍光強度を精密に測定する事により、構造変化のダイナミクスを観測することが可能である。本年度は、二量体や多量体の形成を排除するため、ナノディスクを用いる事で、1分子に由来する輝点の蛍光強度を観測した。蛍光強度が強い状態と弱い状態それぞれの滞留時間からヒストグラムを作成し、構造平衡のダイナミクスを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、発色団の構造だけでなく、蛋白質部分の構造の平衡を、赤外分光、X線散乱、一分子計測などを駆使して多面的に解析することを計画している。本年度は、1分子計測、あるいはX線散乱によって、ヘリックスの再配置や構造変化を直接観測することに成功したので、今後の詳細な解析のための基礎を確立できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画どおり、一分子計測、X線散乱による構造変化の解析を高精度で行うとともに、赤外分光による解析も試みる予定である。
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Research Products
(5 results)