2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23370074
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (20311128)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 幹雄 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (30150254)
山崎 洋一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (40332770)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
Keywords | 蛋白質工学 / 分子設計 / フォールディング / 酵素 |
Research Abstract |
我々は、蛋白質一般に、アミノ酸配列の分断によって、構造・機能に著しい影響が生じる領域が存在することを示してきた。本研究では、これらの領域が、構造や機能の基本要素(エレメント)になっているとの仮説を実証することを目的としている。本目的の達成のため、構造エレメントについては類似構造を有するものの機能が異なる蛋白質間で立体構造上の位置の保存性を検証し、機能エレメントについては機能エレメントを用いた機能改変の可能性について検討している。平成24年度は、類似構造を有するものの機能が異なる蛋白質として、すでにエレメントの同定に成功している核酸分解酵素Staphylococcal nuclease(SNase)と転写調節因子ヒト由来p100蛋白質SNDドメインを選択し、SNDのα2ヘリックス領域、および、β5ストランド領域に対してアラニン挿入変異解析を行った。SNDのこの領域には、3つの構造エレメントが存在し、いずれも、立体構造上Snaseと相同な位置に構造エレメントが保存されていることが明らかとなった。この事実は、これら構造エレメントが立体構造を規定する基本的な要素であることを強く示唆するものである。Snaseの機能エレメントを用いたSNDの機能改変については、機能エレメント移植SNDの発現精製を行い、核酸分解活性の評価を実施した。活性は、Snaseの約1000分の1程度であるものの、機能エレメントの移植によってSNDを核酸分解酵素に改変することに成功した。更に、すでに報告されている核酸分解活性に関与するアミノ酸残基についてSNDのアミノ酸残基を置換した変異体については活性を示さなかった。以上の結果は、機能エレメントの移植によって初めて機能の改変が可能であることを示しており、機能エレメントが機能を実現するための基本要素であることを強く示唆する結果であるといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通じ、類似構造蛋白質での構造エレメントの位置保存性が検証されつつある。更に、機能エレメントについては、機能エレメントの移植によって元の機能と異なる機能に改選することが可能であることを実証することに成功した。完全に異なる機能を有する蛋白質間での機能移植としては、本研究は初めての成果であり、機能エレメントが機能を実現するための基本要素であることを示す結果になり得ると考えられる。以上は、年度当初に予定していた研究であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
SNaseとTSNを用いた研究から、1)類似構造を有する2つの蛋白質間で の構造エレメントの位置保存性を示し、2)SNaseの機能エレメントをTSNに移植することによって核酸分解活性 を有する人工酵素を創製することに成功してきた。これらの事実は、構造エレメントや機能エレメントが蛋白質 の構造や機能を決定する基本因子であることを示唆していると同時に、人工蛋白質設計時の基本部品となり得る可能性を示すものである。 今後は、特に、機能エレメントによる機能移植に注目し、SNDの機能改変に必要なSNaseの機能エレメントの最適化を行い、機能を決定する最小機能因子を決定する。機能エレメントは、アミノ酸配列全域に対してアラニ ン挿入変異体を作製し、アラニン挿入による天然配列の分断が機能に与える影響を考慮することで同定される。 実際には、アラニン挿入による酵素活性の低下は、挿入部位に応じて連続的に低下し、本研究では、挿入によって酵素活性が30%以下に低下する領域を機能エレメントとして実験に用いてきた。しかしながら、30%と言う目安は必ずしも実験事実に基づいて決定されたものではない。そこで、本年度は、1%まで酵素活性が低下する領域を機能エレメントとして再定義し、TSNドメインへの移植を行う。仮に、1%の基準で酵素活性を再現できなかった場合には、基準の見直しを行い、機能移植に必要な最小機能因子の同定を試みる。
|