2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期とクロマチンによる染色体複製開始制御の統合的理解
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23370076
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
升方 久夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00199689)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞周期 / 染色体 / 複製開始 / テロメア / セントロメア / Taz1/TRF1 / Sgo2 |
Research Abstract |
1.複製開始におけるMcm10の必須機能を解明:Mcm10は複製開始のどの反応に必要であるか、諸説まちまちであり不明であった。新規開発のオーキシンデグロン法を用いてMcm10の機能を解析し、Mcm10がCMG複合体に依存して複製開始点に結合し、複製開始点unwindingに必要であることを示した (Kanke et al, 2012)。 2.DNAポリメラーゼεの非触媒必須機能の解明:複製フォークでリーディング鎖合成を担うDNAポリメラーゼεの触媒サブユニットCdc20のN末端ポリメラーゼドメインは生存に必須ではないが、C末端領域CTDは必須である。そのCTDの必須機能を解析した結果、CTDは複製開始段階でのヘリカーゼCMG複合体の形成に必須であり、また複製開始後のCMG複合体の移動に必要であることを示した (Handa et al, 2012)。 3.染色体複製タイミング制御機構の解明:分裂酵母染色体内部の後期複製開始点の複製開始タイミングを規定するしくみに、複製開始点近傍にあるテロメア配列2コピーが必須であることを示し、さらにこの配列にテロメア結合タンパク質Taz1/TRF1/TRF2が結合することがタイミング制御に必要であることを示した。このしくみが、染色体上の約半数の後期複製開始点を制御していることを発見した (Tazumi et al, 2012)。 4.サブテロメア領域の複製タイミング制御へのShigoshin 2の関与:染色体テロメア末端の内側約100 kb領域(サブテロメア領域)は、染色体のどの領域よりも遅く複製するようにタイミング制御されている。通常M期でセントロメアでの染色体分配制御に関与するSgo2タンパク質が間期では広くサブテロメア領域に局在し、複製タイミング制御に関与することを明らかにした(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
真核生物の複製開始で長らく機能が不明であったMcm10がCMGヘリカーゼ複合体の形成以降の複製開始点のunwindingに働くことを証明し、EMBO Journal誌(2012)に発表した。また、DNAポリメラーゼεが複製開始点での複製開始複合体形成とさらに複製フォーク進行に必須であることを示し、Mol Biol Cell誌(2012)に発表した。さらに染色体複製タイミングを規定する機構において、後期複製開始点近傍に存在するテロメア配列にテロメア結合因子であるTaz1が結合するというまったく新規のしくみを解明し、Genes Dev誌(2012)に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
後期複製開始点近傍に結合したTaz1はテロメア因子Rif1との相互作用を介して、複製開始段階のDDK依存的Sld3結合を阻害する。この分子メカニズムを解明するために、Taz1ならびにRif1の機能ドメインと相互作用因子に着目し解明する。具体的にはRif1-Flagタンパク質の免疫沈降産物を質量分析法で解析し、相互作用因子を探索する。さらに、腕部後期複製開始点をGFP-LacIにて蛍光標識し、核内でのテロメアと局在関連性を明らかにし、メカニズムの解明に結びつける。染色体複製タイミング制御の全容を明らかにするため、Taz1非依存的後期複製開始点の必須配列を解析し、結合タンパク質の同定につなげる。複製タイミング制御の生理的意義が明らかになっているとは言えないため、特異的領域の遺伝子発現や生存ストレス下での増殖への影響を明らかにする。
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