2012 Fiscal Year Annual Research Report
後期エンドソームリン酸化シグナルによる細胞機能制御
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23370087
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
名田 茂之 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (50291448)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メンブレントラフィック / リソソーム / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
後期エンドソーム・リソソームの膜アンカータンパク質p18はMEK1やmTORC1などの細胞内情報伝達キナーゼと会合し、細胞の増殖や恒常性の調節を行う情報伝達経路を構成することがこれまでの研究から示唆されている。平成24年度の本課題の研究ではp18の皮膚バリア形成における役割をコンディショナルノックアウトマウスを用いて解析した。皮膚基底細胞層でのp18ノックアウトによりマウス皮膚上皮において角質層が形成されず、顆粒細胞でのケラトヒアリン顆粒と層板顆粒の形成が顕著に減弱した。また上皮層における著しい脂質成分の減少も確認された。顆粒細胞におけるこれらの形成不全が角質層そのものの構造とバリア機能の形成不全の理由であると考えられた。ケラトヒアリン顆粒の主成分であるフィラグリンは遺伝子発現の低下が認められ、これがp18ノックアウト上皮での量的な変動の理由と考えられた。一方層板顆粒はリソソーム由来オルガネラの一種であり、p18KO細胞でのリソソーム成熟不全と共通した理由により形成低下しているものと推測される。新たなp18結合タンパク質の検索については、N末に発見された結合モチーフに特異的な変異を持つ分子をコントロールとして、結合タンパク質とp18を細胞ライセートより共精製することを試みた。しかしながらp18の可溶化に必要な界面活性剤存在下では従来知られている結合タンパク質については共精製が可能であるものの、新規結合モチーフ特異的な結合タンパク質については検出することができなかった。精製ではなく、特定の分子を標的とした細胞生物学的なアプローチによる結合タンパク質の同定が必要であると結論し、次年度以降の研究へと継続することとした。mTORC1経路依存的な後期エンドソームタンパク質の網羅的解析については、部分精製リソソーム画分のSILACによる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画として挙げた3つのテーマのうち、p18の皮膚バリア形成における役割については解析を終了し、論文を投稿中である。新規結合モチーフへの結合タンパク質の同定については当初予定の精製を行い、結果として新たなたんぱく質は同定できなかったものの引き続くべき方向性が見出された。mTORC1依存的なリソソームタンパク質の網羅的解析については平成24年度中にリソソーム画分の分離と質量分析まで進めており、ほぼ当初予定通りの進行程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の研究では最終的にmTORC1、あるいはMAPK経路の直接の標的タンパク質の同定と機能解明が必要である。解析候補とするいくつかの遺伝子やタンパク質の絞り込みの次にそれらの個々の機能解析を進めていく必要があるが、従来の遺伝子ノックアウトやRNAiなどによる機能阻害では長期間の準備が必要であったり効果が決定的でないなどの理由で短期間で判断を下すことが難しかった。最近開発されたCRISPR/Cas9システムを用いた体細胞遺伝子破壊ではこれらの動物細胞を使った研究の弱点が克服される可能性があり、本研究でも次年度の研究でこれらの技術を用いて研究のさらなる推進を目指す。
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