2011 Fiscal Year Annual Research Report
極体形成から卵割への分裂システム転換をもたらす卵母細胞の表層リモデリング
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23370091
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大隅 圭太 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20221822)
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Keywords | 細胞 / 蛋白質 / 細胞表層 / 卵母細胞 |
Research Abstract |
まず、表層蛋白質の回収を視野に入れて卵母細胞表層の単離法に改良を加えた。シアノアクリレート系接着剤を用いた接着剥離法により単離した表層を緩衝液中で充分に洗浄した後、界面活性剤、次いで5M尿素で成分抽出を行い、最後に電気泳動用バッファーで残りを可溶化する3段階抽出法を確立した。各段階の抽出物について、成熟前、減数第一分裂期、成熟後の各卵母細胞間の電気泳動法比較を行ったところ、界面活性剤抽出成分に、30KDaの異動度を示す成熟前卵母細胞の蛋白質が、減数第一分裂期以降に消失することが見いだされた。マス解析により、この蛋白質の同定を試みている。また、尿素抽出成分にも、卵成熟前後で泳動上の異動度が変化すう成分がいくつか見いだされた。 収縮環形成の制御に関与すると考えられる蛋白質anillin、formin、moesin、cortactinに対するウサギ抗血清を作製し、卵成熟期のそれらの動態をウエスタン法によって解析した。その結果、anillinについては、卵成熟の前後で卵細胞質中の量が約2倍に増加すること、また、単離表層に含まれる量は4倍に増加することが示された。この結果は、卵成熟期に新規合成されるanillinが優先的に表層に蓄積されることを示しており興味深い。その生理的意義を調べるため、アンチセンスオリゴを用いてanillinの新規合成を抑制したときの影響を解析中である。moesinについては、量的な変動は認められなかったが、抗体を卵母細胞に顕微注射すると、減数第一分裂期以降に、表層の色素分布が著しく乱れることが示され、卵成熟期の表層リモデリングにmoesinが何らかの機能的役割を果たしていることが示唆された。formin、cortactinについてもウエスタン法による解析が進行中で、forminについては、興味深いバリアントの存在が示された(「今後の研究の推進方策」の項参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカツメガエル卵母細胞の表層単離法の確立と、それに基づく、卵成熟期における表層構成蛋白質の変化の記載が、本研究の初年度に計画されていた主な内容である。この2点は順調に達成され、卵成熟の開始後に消失する蛋白質の存在が示され、その同定が進められている。また、anillin, cortactin, fermin, moesin等のアクチン結合蛋白質に対する特異抗体も順調に作製され、それらを用いた各蛋白質の動態解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って研究を推進する。また、formin (inverted for mmin type II)蛋白質のウエスタン法による動態解析から、初期胚と培養細胞(一般的な体細胞)では、発現しているformin蛋白質の電気泳動的移動度が異なり、胚発生め途中で異動度の大きな初期胚型が、異動度の小さな体細胞型へと置き換わることが判明した。この異動度の減少は、膜結合領域の付加によること、したがって、この蛋白質の細胞内局在が初期胚細胞と分化した体細胞では異なることが強く示唆された。胚発生におけるバリアント間の転換およびその生理的異議についても、新たな課題として検討を加える。
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Research Products
(2 results)