2011 Fiscal Year Annual Research Report
温帯への分布拡大に伴うアカショウジョウバエ適応進化の実験室内再現
Project/Area Number |
23370096
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田村 浩一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00254144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 隆嗣 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70301223)
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 進化 / 環境適応 / 人為選択 / cDNA / 次世代シーケンサ |
Research Abstract |
アカショウジョウバエはテングショウジョウバエ亜群に属する近縁種と同様、もともと熱帯、亜熱帯に生息していたが、1980年代後半から本州、四国にも分布を広げ、現在では中部地方でも生息が確認されている。本研究は、アカショウジョウバエの熱帯・亜熱帯から温帯への適応進化の分子機構を解明することを目的としている。平成23年度は(1)低温耐性人為選択系統の作成と(2)次世代シーケンサを用いた網羅的cDNA解析を行った。 ショウジョウバエは交配実験と経代飼育が容易なことから、人為選択法が有効に利用できる。平成23年度は、まず低温耐性が高い台湾の系統と低い東南アジアの系統を交配し、その雑種第一代(F1)を得、さらに東南アジア系統を6世代戻し交配してBC6系統を得た。戻し交配では、戻し交配系統の雌の中から、低温耐性が弱い系統のほとんどが死亡する1℃16時間の低温処理で生き残った個体を選抜して次世代のための親として用い、東南アジア系統の雄を交配した。その結果、低温処理によるF1の生存率は約80%で、6世代戻し交配によってBC6系統の生存率は約20%まで低下したが、ほとんどが死亡する東南アジア系統の生存率よりは高かった。 一方、BC6系統が持つ台湾系統由来の遺伝子は、1℃16時間の低温処理でも生き残るために必要な低温耐性の原因遺伝子であることが期待できる。そのような遺伝子を探索するため、台湾系統と東南アジア系統のcDNAをIlluminaシーケンサを用いて網羅的に決定し、どちらの系統由来か識別するためのSNPサイトの検出を行った。その結果、5533遺伝子において由来系統が識別できるSNPサイトが見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温処理による人為選択を行いながら戻し交配を行う実験は6世代まで完了した。また、この戻し交配系統が保持する低温耐性の原因遺伝子を特定するためのSNP解析についても、5000以上の遺伝子が対象となることが次世代シーケンサを用いたcDNA解析によって分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
人為選択と戻し交配を用いた低温耐性原因遺伝子の特定は、当初は10世代まで戻し交配を行う予定だった。しかし、親系統の染色体間に逆位があることが判明したため、遺伝子置換の効果は小さいと予想され、今年度に完了した6世代で終了することにした。同様の理由で、集団ケージを用いた実験も成果は期待できないことが分かった。そこで、集団ケージ内での遺伝子頻度の変化を経時的に分析する代わりに、1980年代後半と本年度に本州、四国で採集した系統を用い、それらの間で対立遺伝子頻度に大きな変化が生じた遺伝子を探索することに研究方針を変更することにした。
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Research Products
(3 results)