2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネのカスパリー線へのスベリン供給を調節する膜輸送体・転写因子の機能解明
Project/Area Number |
23380004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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Keywords | イネ / カスパリー線 / スベリン / ABCトランスポーター |
Research Abstract |
植物の根の内皮および外皮には、アポプラスト輸送を阻害し原形質連絡によるシンプラスト輸送を促すカスパリー線と、水・溶質・ガスなどの移動をほぼ完全に阻害するスベリンラメラが存在する。両方とも疎水性の高いスベリンが細胞壁部分に蓄積することによって、吸収した水・溶質を保持し、さらに土壌からの有害物質の侵入を防ぐアポプラストバリアとして働く。本研究では、イネのハーフサイズABCトランスポーターであるRCN1が、スベリン前駆体の細胞内極性輸送によってカスパリー線形成に関与するのかどうかを検証し、RCN1のパートナーのABCトランスポーター、スベリン合成・輸送系遺伝子の発現を制御する転写因子を同定することで、カスパリー線へのスベリン供給機構を解明することが目的である。さらに、アポプラストバリア強化によるストレス耐性品種の作出を目指した「応用研究の基盤を確立させる。 平成23年度は、rcn1変異体の内皮および外皮でのスベリンの蓄積量が変化しているかどうかを確認するために、根の中心柱(内皮を含む)および外層組織(外皮を含む)を分離して、ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)によるスベリン含量の分析を行った。その結果、野生型と比べ、rcn1変異体において、外層組織では極長鎖脂肪酸由来のスベリンモノマーが減少しており、中心柱では長鎖脂肪酸由来のスベリンモノマーが増加していた。今後、これらの変化がスベリンラメラやカスパリー線の構造に影響を与えているかどうかを確認する必要がある。 RCN1のパートナーになるABCGタンパク質の候補遺伝子を選抜して、これらの候補遺伝子にRFPをつないだ融合遺伝子を作製した。これらの融合遺伝子とRCN1-GFPの融合遺伝子をタマネギの表皮細胞に共発現させて、2つの融合遺伝子の細胞内局在を調査したところ、うまく蛍光を観察することができなかった。プラスミドの再構築を行ったので、平成24年度に再度検出を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パートナー遺伝子の同定に至っていないため、当初の研究計画よりやや遅れている。RCN1とパートナー候補遺伝子を共発現させ、RCN1の細胞内局在の変化を観察することでパートナーになるABCGタンパク質の同定を試みた。しかし、本来単体ではERに観察されるRCN1-GFPの蛍光が細胞間隙に観察された。また、シロイヌナズナにおいて単体で細胞膜とERのそれぞれに局在するAtABCG11及びAtABCG12についても同様の結果が得られた。このことから、タマネギの表皮細胞ではこれらの遺伝子の細胞内局在が正確に観察できなかったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
パーティクルガン法では、タマネギの表皮細胞においてABCGタンパク質の細胞内局在を正確に観察することができなかった。そこで平成24年度はタバコ培養細胞であるBY2を用いて、RCN1-GFPの融合遺伝子とパートナー候補遺伝子にRFPをつないだ融合遺伝子を共発現させることで、2つの融合遺伝子の細胞内局在を観察し、パートナー遺伝子の同定を行う。同定した遺伝子については、RCN1との相互作用についてBiFC法により観察する。さらに同定した遺伝子がカスパリー線におけるスベリンの蓄積に関与するかどうかを調査するため、遺伝子抑制系統を作製し、スベリン染色を行う。また、この遺伝子がカスパリー線で機能しているかどうかを調べるために、遺伝子のプロモーター領域にRFPをつないだ融合遺伝子のイネ形質転換体を作製する予定である。
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Research Products
(1 results)