2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネのカスパリー線へのスベリン供給を調節する膜輸送体・転写因子の機能解明
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23380004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イネ / カスパリー線 / スベリン / ABCトランスポーター |
Research Abstract |
本研究では、イネのハーフサイズABCトランスポーターであるRCN1が、スベリン前駆体の細胞内極性輸送によってカスパリー線形成に関与するのかどうかを検証し、RCN1のパートナーのABCトランスポーター、スベリン合成・輸送系遺伝子の発現を制御する転写因子を同定することで、カスパリー線へのスベリン供給機構を解明することが目的である。さらに、アポプラストバリア強化によるストレス耐性品種の作出を目指した応用研究の基盤を確立させる。 平成24年度は、RCN1のパートナーになるABCGタンパク質の候補遺伝子にRFPをつないだ融合遺伝子を再構築した。一過的な発現系を用いて、その融合遺伝子とRCN1-GFPの融合遺伝子を共発現させて、2つの融合遺伝子の細胞内局在を調査したが、うまく蛍光を観察できなかった。そこで、イネへの形質転換系を用いて候補のABCトランスポーターが内皮のカスパリー線の部位に局在するかどうかを検証することにした。 NAC系転写因子およびWRKY系転写因子が、根においてRCN1遺伝子やスベリン合成遺伝子と同じ部位で発現をすることが確認できていることから、これらの転写因子遺伝子の過剰発現形質転換イネ系統、機能抑制形質転換イネ系統を作出した。これらの中で形質転換体の作出が先行しているNAC遺伝子の過剰発現形質転換系統において、RCN1遺伝子や一部のスベリン合成遺伝子の発現が誘導されていることが明らかとなった。この結果より、少なくともこのNACタンパク質はRCN1やスベリン合成遺伝子の発現制御に関わる転写因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一過的な発現系ではRCN1のパートナーになるABCGタンパク質の候補遺伝子の同定が困難であるという結論に至ったために、イネへの形質転換系による確認に方針を切り替えた。NAC系転写因子遺伝子の過剰発現形質転換系統において、RCN1遺伝子や一部のスベリン合成遺伝子の発現が誘導されていることが明らかとなったことから、このNAC系転写因子はRCN1遺伝子やスベリン合成遺伝子の発現制御因子の一つであることが示唆された。したがって、RCN1遺伝子やスベリン合成遺伝子の発現制御に関わる転写因子の同定については概ね研究計画通りに進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
候補のABCトランスポーター遺伝子のプロモーターにGFP:ABCG融合タンパク質遺伝子をイネに形質転換して、候補のABCトランスポーターの局在部位を調査する。この結果、RCN1の局在部位に共局在するABCトランスポーターが同定されれば、RCN1と候補のABCGタンパク質が二量体を形成するかどうかを確認する。NAC系転写因子によるRCN1遺伝子やスベリン合成遺伝子の発現制御機構を明らかにするために、プロモーター領域のシス制御配列の探索等を進める。さらに、この転写因子の過剰発現形質転換イネ系統におけるカスパリー線形成の影響および植物の耐塩性の変化などを調査する。
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