2012 Fiscal Year Annual Research Report
節肥性を示す異種染色体添加コムギおよび合成コムギの遺伝育種学的研究
Project/Area Number |
23380006
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
辻本 壽 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (50183075)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コムギ / 染色体添加 / リン酸肥料 / 亜鉛 / 節肥性 |
Research Abstract |
節肥性を作物に付与することは肥料資源と地球環境保護のため重要である。本研究では野生植物の染色体を含む異種染色体添加コムギ系統のミネラル吸収について研究し、この系統の花粉にX線を照射し染色体欠失系統の育成を行った。まず、2011年、2012年に栽培した、Ae. umbellulata、Ae. searsii、Ae. peregrina、Ae. geniculata染色体を含むパンコムギChinese Spring系統の種子に含まれる、鉄、亜鉛、マンガン、カリウム量を測定し、高い値を示す系統を選抜した。さらに、ミネラルを種子に多く含む系統の選抜を、茎葉においても行えるかを調査するため、これら系統の発芽後、1、2、2.5か月後の植物体の茎葉に含まれるミネラル含量も調査した。その結果、両年において鉄、亜鉛、マンガンを多く含む系統を得、これらの含量が互いに相関していることを見いだした。また、葉内の含量とミネラルの含量に正の相関を示す時期があり、この時期の茎葉の含量を調査することにより、種子内のミネラルの蓄積を予想できることが明らかになった。次に、ミネラルの蓄積に関与する異種染色体部位の同定と、異種染色体の微小部分をコムギ染色体に取り込むことを目的として、X線照射花粉をパンコムギに交配し染色体欠失系統を育成した。しかしながら、欠失染色体をヘミ接合で含むため、これら系統のミネラル含量を調査する前に、染色体をホモ接合にする必要がある。一方、これまでの研究でオオハマニンニクのJ染色体添加系統は、高いリン酸の吸収量を示すことが明らかになっていたので、J染色体を一対添加した系統の花粉にX線を15Gy照射し、多数のF1雑種を得た。しかし、染色体調査で、J染色体の存在が見あたらず、系統維持の過程でJ染色体が失われていることが分かった。この系統がどのような理由でJ染色体を失ったかは全く不明であるが、人為的なミスではないようである。現在、世代を遡った系統から、純正な系統を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究費を繰越し、25年度にポスドクを雇用し、合成コムギの元素含有量を調べることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたデータを解析し、合成コムギ中に元素含有量の遺伝的変異を解析し、さらに元素含有量間での相関から、元素の吸収機構を考察する。
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