2011 Fiscal Year Annual Research Report
毒素とエリシター:病原菌に由来する細胞死誘導因子の機能と病理学的役割の比較研究
Project/Area Number |
23380025
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
児玉 基一朗 鳥取大学, 農学部, 教授 (00183343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 博文 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30240245)
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Keywords | 植物病原菌 / 毒素 / エリシター / 細胞死 |
Research Abstract |
植物-病原体相互作用の場において、菌の生産する毒素は病原性因子として、一方、エリシターは非病原性因子として機能する。両者は植物細胞死(プログラム細胞死)の誘導因子という共通の作用を示すが、その病理学的意義は全く正反対である。本研究では、毒素とエリシターという細胞死誘導エフェクター因子の意義と機能に関する比較検討を通して、両者の介在する植物-病原体相互作用の統一的理解を目指す。 本年度は以下の検討を行った。申請者らが新たに見出した毒素感受性シロイヌナズナ変異体(Asc1欠失)(AAL毒素・病原菌感受性モデル植物)を活用し、エリシター/毒素による細胞死の病理学的意義を比較解析した。毒素/エリシターを前処理したシロイヌナズナ変異体にA. alternataを接種し、過敏感細胞死(プログラム細胞死)の影響を調査した結果、細胞死が誘導された後は本来感染できない非病原性A. alternataによる感染が誘導されることを明らかにした。また、同様の結果は毒素処理によっても再現された。これら植物組織においては、過敏感細胞死のマーカー遺伝子の発現が認められた。また、Nicotiana umbraticaにおいて,エチレンシグナル経路とAP2/ERF型転写因子であるModulator of AAL-toxin cell death(MACD1)が,AAL毒素細胞死に重要な役割を果たすことを示した。さらに、エフェクター分子(毒素)のヘテロロガス発現系を構築するため、A. alternata tomato pathotypeにおける毒素生合成遺伝子クラスター全領域の解析を進めた。 以上の検討により、それぞれのエフェクター分子により誘導される宿主・非宿主の細胞死がnecrotroph菌感染に及ぼす影響を明確にでき、さらに、細胞死誘導過程の分子機構が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究目的および本年度の計画に照らし合わせて、ほぼ計画通りの検討を行い、予想される成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に得られた研究成果に基づき、エリシター/毒素分子のヘテロロガス発現系を利用した機能解析、また、シロイヌナズナの毒素感受性・細胞死変異体におけるnecrotrophicおよびbiotrophic病原体の感染行動の比較、さらに両エフェクター分子による細胞死誘導過程の分子解析を進める予定である。その結果、研究目的である「毒素とエリシターという細胞死誘導因子の意義と機能に関する比較検討を通して、両者の介在する植物-病原体相互作用を統一的に理解する」ことが可能になるとと期待される。
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Research Products
(11 results)