2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物寄生性線虫の寄生阻害物質の探索・同定とその寄生阻害機作の解明
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23380029
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
水久保 隆之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・病害虫研究領域, 上席研究員 (30370513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂美 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (80414910)
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Keywords | ネコブセンチュウ / ジャスモン酸 / スクラレオール / エチレンシグナル伝達系 |
Research Abstract |
本課題では、我々が見出したジャスモン酸処理によるセンチュウ寄生の抑制現象に基づく仮説「ジャスモン酸が植物代謝産物等の産生等を経てセンチュウの寄生を抑える」を検証するべく、ジャスモン酸誘導性のセンチュウ侵入抑制物質の単離同定及び作用機作の解明を主な目的として研究を進めている。前年度までに、ジャスモン酸を処理したトマトの根の中性及び酸性画分の中にネコブセンチュウ侵入抑制活性を持つ物質が存在することを見出していた。ジャスモン酸自体が酸性画分に含まれることから、23年度はまず中性画分に焦点を当て、線虫寄生抑制物質の探索を試み、テルペノイドのスクラレオール(C_<20>H_<36>O_2)を単離し、その高いセンチュウ侵入抑制活性の検証を終えるとともに、本物質のセンチュウへの作用がエチレンシグナル伝達系を介していることまで特定できた。すなわち、100μM以上の濃度で2目以上経過させたスクラレオール処理は、トマトにおいてもシロイヌナズナにおいても、センチュウの根への侵入数を対照(無処理)の3分の1程度に低下させた。シロイヌナズナのエチレンシグナル伝達欠損変異体にスクラレオールを処理した場合にセンチュウ侵入抑制効果は認められなかった。なお、スクラレオールの類縁体であるスクラレオライド(C_<16>H_<26>O_2)は、同じ条件で処理してもセンチュウ侵入抑制効果を示さないことを明らかにして、スクラレオールの特異性を証明するとともに、構造と抑制活性の間にはある種の相関関係が成り立つ可能性を提示できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジャスモン酸を処理したトマト根より抽出した中性画分から、予定通りネコブセンチュウ侵入抑制物質を単離することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)侵入抑制物質の構造解析 ジャスモン酸を処理したトマトの根の酸性画分から侵入抑制物質の精製・単離を進める。単離できた物質についてはその構造を解析する。 (2)侵入抑制物質がセンチュウにもたらす影響の評価 侵入抑制物質のセンチュウに対する殺虫効果の有無を評価する。 (3)活性物質処理植物の遺伝子発現評価 侵入抑制物質を処理したトマト・シロイヌナズナの体内において、発現が上昇もしくは減少している遺伝子を評価する。 (4)細胞形態学的変化の評価 侵入抑制物質の処理前後のトマトの根における細胞形態学的な変化を評価する。 (5)シロイヌナズナ等欠損体を用いた解析 上記(3)において、無処理時に比較して、発現が大きく変化している主だった遺伝子や輸送体に着目し、シロイヌナズナ等におけるそれら遺伝子や輸送体の欠損変異体を用いて、センチュウ侵入抑制に果たすこれら遺伝子の役割の解明を試みる。
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Research Products
(2 results)