2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規創農薬ターゲットの創出を目指した昆虫性決定カスケードの標的遺伝子の網羅的解析
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23380032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雅京 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30360572)
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Keywords | 性決定 / カイコ / transformer-2遺伝子 / 選択的スプライシング / doublesex遺伝子 |
Research Abstract |
ショウジョウバエのtra-2はメス分化に必須の遺伝子であり、dsxのメス型のスプライシングを誘導することが知られている。一方、Bmtra-2はショウジョウバエのtra-2のカイコホモログとして同定された遺伝子であるが、その機能については明らかにされていない。そこで、本研究ではBmtr-2がカイコのdsx(Mmdsx)の性特異的スプライシングに関与するか否かを調べることにした。ショウジョウバエのdsxミニ遺伝子を導入したカイコ培養細胞を用いたRNAi実験の結果から、Bmtra-2はショウジョウバエdsxのメス型のスプライシングを誘導する働きを持つことが分かった。次に、カイコの卵を用いたRNAi実験によりBmtra-2のノックダウンを行い、Bmdsxの性特異的スプライシングに及ぼす影響を確認した。その結果、RNAiによるノックダウンによりBmtra-2の発現量は対象区と比較して10~30%まで抑えられていたが、これらの卵におけるBmdsxのスプライシングパターンは対象区もしくは未処理区と比べて差は見られないことが分かった。以上の結果から、Bmtra-2はショウジョウバエのdsxのメス型のスプライシングを誘導出来るにも関わらず、Bmdsxの性特異的スプライシング制御には関与しないことが示唆された。一方、上述のRNAi処理を施した卵を艀化させ、3齢まで飼育して解剖し、生殖巣形成への影響を観察した結果、卵巣の形態には異常が見られなかったが、精巣については精室が分離・減少するという異常が確認された。Bmtra-2の発現プロファイルをRT-PCRにより調べた結果、幼虫期から蛹期の精巣において高い発現を示すことが明らかとなった。以上の結果から、Bmtra-2の機能として、カイコの精巣の分化・形成に関与することが考えられた(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度はChIP-Seq法によりカイコ及びショウジョウバエのdsx標的遺伝子の網羅的探索を行う予定であったが、ChIP-Seq法の実施において鍵となる良好な特異的抗体を作製することが出来なかったため、当初の計画通りChIP-Seq法を行うことが出来なかった。そこで予定を変更し、近年昆虫において性決定遺伝子として報告が相次いでいるtra-2遺伝子のカイコにおける機能を明らかにする研究を進めたところ、カイコにおいてはtra-2は性決定に関与しないとの興味深い知見を得ることが出来た。現在これらの研究成果については近日中に論文投稿予定である。また、蛾類昆虫のうち貯穀害虫として世界的に被害をもたらすガイマイツヅリガの性決定機構に関する研究も進め、害虫への応用を視野に入れた研究に着手することも出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
BmDSXタンパク質に対する特異的抗体が得られなかったことから、ChIP-Seq法を用いたBmdsx標的遺伝子の網羅的探索は断念せざるを得ない。しかし、カイコの性決定のマスター遺伝子であるFemに変異をもつ突然変異系統を入手出来たので、今後はこの突然変異系統のゲノムリシーケンスを行い、この系統にユニークなSNPsや欠失・挿入変異を探索し、カイコの性決定遺伝子を同定する予定である。また、ショウジョウバエのDSXについても良好な抗体が得られなかったが、flag-tagをDSXに付加したトランスジェニック系統の存在が確認出来たため、今後はこの系統を入手し、FLAG抗体を用いたChIP-Seqを行うことによりdsx標的遺伝子の網羅的探索が可能であると想定している。
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Research Products
(4 results)