2011 Fiscal Year Annual Research Report
花香を介した送粉共生系進化プロセスの分子生態学的解析
Project/Area Number |
23380035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Field |
Applied entomology
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 律夫 京都大学, 農学研究科, 教授 (30135545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 肇 京都大学, 農学研究科, 助教 (70452282)
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Keywords | 送粉シンドローム / ミバエラン / フェニルプロパノイド / 共進化 / 生合成 / 誘引物質 / 花香成分 / フェロモン |
Research Abstract |
熱帯雨林地域のBulbophyllum属ミバエラン数種の生産する花香成分の化学組成を明らかにした.タイ,マレーシア産のBu.macranthumには,ジンゲロンが主成分として含まれていたが,パプアニューギニア産の同種では,ラズベリーケトン(RK)が主成分であった.また,前種に近縁のBu.praetervism(マレーシア産)においてはRKが主要成分であった.これらの事実は,送粉ミバエ種に同調した生合成系のモディフィケーションが起こった可能性を示唆している.これらのラン種については,受粉のプロセスが不明であったが,花の組織/器官に分布する誘引成分の定量的比較から,受粉メカニズムに関わる重要な知見を得ることができた.ミバエ類を誘引する花香花香フェニルプロパノイド生合成に関わると思われるchalcone phenylpropanoid synthetic pathwayに注目し,Bu.macranthumにおける生合成酵素遺伝子の部分配列をクローニングし,全長配列の決定を進めた.Bactrocera属ミバエ類は極めて多様に分化し,東南アジアを中心に数百種にのぼるとされ,花香の嗅覚受容がランとの共進化プロセスを理解する上に重要な意味をもっている.フェニルプロパノイドやC13ノルテルペノイドにアフィニティーを持つミカンコミバエ,ウリミバエおよびナスミバエにおける雄特異的なリガンド化合物に対する嗅覚受容システムについて解析するため,分子生物学的観点からの試料収集を行った.また,雄ミバエが誘引物質摂取後,直腸フェロモン腺に蓄積する成分についてスペクトル分析を行い,新規物質の化学構造に関する知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従って,花と送粉者双方の適応プロセスを解析してきた.ミバエラン花香成分の詳細な化学成分分析とその生合成に関わると思われる遺伝子的背景について知見を得る一方,送粉者ミバエの触角による花香受容のメカニズムの解析の準備を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
未知のBulbophyllum属ミバエラン花香成分を克明に化学解析し,分子系統解析と重ね合わせることによって,生合成系との関連を精査する.とくに注目されるフェニルプロパノイド生合成系に関わる酵素群を各植物から見つけ出し,遺伝的背景を体系的に調べる.一方,Bactrocera属ミバエ類触角に発現していると思われるレセプター遺伝子について,分子生物学的手法を用いて知見を得る方策を立てている.
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Comparison of phenylpropanoid volatiles in male rectal pheromone gland after methyl eugenol consumption, and molecular phylogenetic relationship of four global pest fruit fly species-Bactrocera invadens, B.dorsalis, B.correcta and B.zonata2011
Author(s)
Tan, K.H., Tokushima, I., Ono, H., Nishida, R.
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Journal Title
Chemoecology
Volume: 21
Pages: 25-33
DOI
Peer Reviewed
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