2012 Fiscal Year Annual Research Report
膜脂質層の分子的改変による酸性土壌複合ストレスへのマルチ耐性植物の創生
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23380041
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
我妻 忠雄 山形大学, 農学部, 客員教授 (70007079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和崎 淳 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00374728)
渡部 敏裕 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60360939)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルミニウム耐性 / イネ / ステロール / メタボローム / リン脂質 / リンリサイクリング |
Research Abstract |
リン欠乏条件化で栽培したイネの根ではリン脂質の割合は低下し、逆にガラクト脂質の割合が増加した。この低リン脂質イネに対してAl処理を施すと、通常濃度のリンで栽培したイネと比較してAl耐性が強化された。さらに、低リン脂質イネでは、低pH条件下での低カルシウム耐性が強化された。一方、ステロール合成の鍵酵素をコードする遺伝子HMGを過剰発現させることによってイネのステロール量を高めることに成功し、また、その組換え体のAl耐性が強化されることが明らかになった。次に、イネ42品種を黒ボク土で±P処理を20日間行った。低リン耐性は、あきたこまち、赤米、冷立稲で高く、農林1号、はえぬきで中程度、陸羽132号、コシヒカリ、寝太郎で低かった。代表的な赤米、コシヒカリに関して、メタボローム解析を行った。根部浸出物量は、+P区と比べて-P区で、赤米では18化合物(13 %)が増加し、63化合物(46 %)が減少し、70化合物(57 %)が変化しなかった。コシヒカリでは27化合物(22 %)が増加し、26化合物(21 %)が減少し、70化合物(57 %)が変化しなかった。現在、これらの膨大なデータを詳細に解析中である。更に、リン欠乏条件下で発現量が高まる遺伝子の変異株を栽培し、リンの分配と膜脂質構成の解析を行った結果、AtOCT1 (At1g73220)が糖脂質(特にDGDGの増加)に、MtN21のホモログ(At4g15540)が膜脂質の再編によるリンの再転流に、glycerol-3-phosphate transporter (At3g47420)がglycerol-3-phosphateの輸送に関わることで間接的なリンの再転流に、それぞれ寄与することが示唆された。以上の結果、ステロール・リン脂質合成をコードする遺伝子の改変によるマルチ耐性植物の創生への見通しが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜脂質に関して、当初は高い再現性・抽出効率の確立に時間を要したが、現時点では順調に進行している。また、低リン耐性の異なるイネ品種の代謝産物などに関するメタボローム解析ができた。さらに、低リン耐性に関わる遺伝子解析も終了できた。
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Strategy for Future Research Activity |
リン脂質からガラクト脂質への変換に寄与するPAHを高発現させたイネについて、Al耐性スクリーニングと脂質分析を進める。また、PAHに加え、ステロール合成の鍵遺伝子HMGも高発現させた二重組換え体についても、Al耐性、低リン耐性の解析と脂質分析を進める。さらに、低リン耐性の異なるイネ品種のリンリサイクリング能およびリン酸獲得能に関わる代謝産物を明らかにする。
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Research Products
(11 results)