2011 Fiscal Year Annual Research Report
低フィチンダイズの環境適応性の解析とリン資源有効利用技術の開発
Project/Area Number |
23380043
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
実岡 寛文 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (70162518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小櫃 剛人 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
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Keywords | 低フィチン / ダイズ / 環境適応性 / 生産性 / リン酸資源 |
Research Abstract |
ダイズは植物性飼料原料として家畜飼料として利用されている。しかし、有機態リン酸の一つである「フィチン酸(ミオイノシトール6リン酸)」がダイズには多く含まれているが、フィチン酸は豚や鶏では吸収・利用できない。そのため、大量のリン酸が糞として環境中に排泄されている。にもかかわらず、家畜に吸収利用できるリン酸が飼料に少ないために、無機リン酸が添加されている。この無機リン酸は有限な資源であり枯渇が心配されている。原料であるダイズから、リン酸の利用効率を高めることができれば、飼料に添加する無機リン酸が低減できリン酸資源の節約につながると同時に、畑地へのリン酸の蓄積を軽減し環境負荷を防止できる。この問題を解決するために研究代表者らは2004年から低フィチンダイズの育成を行っている。そこで、まず始めに、平成22年度まで得られたF7系統を23年6月から11月にかけて広島大学精密実験圃場で栽培し、各系統の生産性と環境適応性を調査し、低フィチンダイズの選抜を行った。その結果、全リン酸(全P)に対するフィチン態リン酸(Phy-P)の割合が約30%で、かつ、その収量も普通栽培品種や高フィチン系統(Phy-P/全P=80%)と変わらない300~350kg/10aの収量性を持つ低フィチン系統が得られた。また、低フィチン系統の粗タンパク質、粗脂肪、粗灰分、ミネラル濃度などの飼料成分にも差がなかった。一方、低フィチン系統の低リン条件下での適応性を調査することを目的にして、10a当たり10kgP_2O_2(対照)区と5kgP_2O_2(低リン)区の施肥条件で栽培し結果、収穫期の個体当たりの子実重は、低リン区および高リン区とも、高・低フィチン系統間で大きな差は無かった。以上の結果から、普通栽培品種および高フィチン系統と同様に環境適応性および収量性ともすぐれた低フィチンダイズが選抜できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交雑育種で得られたF7系統を23年度に圃場栽培した結果、フィテン酸含量が低くく、かつ、収量性の安定した低フィチン系統が選抜できたことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終目的は、低フィチンダイズの環境適応性とリン酸資源の有効活用技術の開発である。24年度以降、F8系統の中から西日本で環境適応性の高い系統を選抜すると同時に、23年度に収穫した低フィチンダイズを非反芻家畜鶏に給与し、低フィチンダイズから吸収・利用されたリン酸、糞として体外に排出されたリン酸の量を測定し、低フィチンダイズを利用したリン酸資源の有効活用法について検討する。
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