2012 Fiscal Year Annual Research Report
低フィチンダイズの環境適応性の解析とリン資源有効利用技術の開発
Project/Area Number |
23380043
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
実岡 寛文 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (70162518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
前田 照夫 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (50144895)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 土壌肥料 / リン酸 / フィチン酸 / 環境汚染 / 資源の有効利用 / 家畜 |
Research Abstract |
家畜の植物性飼料原料として大量に利用されているダイズには有機態リン酸の一つであるフィチン酸が多く含まれている。フィチン酸は豚や鶏では吸収・利用できないため、大量のリン酸が糞として環境中に排泄されている一方で、家畜に吸収・利用できるリン酸が飼料に少ないために、無機リン酸が添加されている。この無機リン酸は有限な資源であり枯渇が心配されている。飼料原料のダイズからリン酸の利用効率を高めることができれば、飼料に添加する無機リン酸が低減でき、リン酸資源の節約につながると同時に、環境へのリン酸の蓄積を軽減し、環境負荷を防止できる。この問題を解決するために研究代表者らは低フィチンダイズの選抜・育成を行っている。 24年度は、次の実験を行った。 1)30系統を平成24年6月上旬から広島大学精密実験圃場で栽培し、11月~12月中旬にかけて収穫し子実のリン酸濃度を測定した。その結果、全リン酸に対するフィチン態リン酸の割合が約35%以下の低フィチン系統が21系統が選抜できた。 2)低フィチンおよび高フィチン系統を10a当たり5kgP2O5と10kg P2O5の施肥条件で栽培し、低フィチン系統の環境適応性を評価した。その結果、開花期の光合成速度およびアセチレン還元法で測定した窒素固定能、生育量および収穫期の子実重は両系統間で差は無く、ダイズの子実のフィチン含量を低下させても環境適応性に影響は見られなかった。現在、両リン酸施肥下での子実の粗タンパク質、粗脂肪、粗灰分、ミネラル濃度などの品質評価を行っている。 3)低フィチンおよび高フィチンダイズで調整した鶏の配合飼料を産卵鶏およびブロイラーに2週間給与し試験した所、低フィチン系統で飼育した雛は、普通品種で飼育した雛に比べて増体量が大きく、かつ糞として排出されるリン酸量も低い傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、枯渇が心配されているリン鉱石の有効活用とリン酸資源の節約技術、環境へのリン酸の排泄量を軽減し環境負荷低減技術を開発することにある。 単胃動物では飼料に含まれるリン酸の多くが消化・吸収できないために、リン酸を飼料に添加している一方で、家畜の糞として大量にリン酸が環境中に排泄されている。本研究では、飼料原料に含まれるリン酸を家畜に吸収・利用しやすい形に換えることで、これらの問題を解決することを目的にしている。 この問題を解決するためには、1)低フィチン穀類を選抜・育成すること、また、2)選抜した系統の中から、収量が高く、安定した生産性を持つ系統を育成するには、普通栽培品種と生産性及び環境適応性を評価すること、3)育成した穀類を家畜飼料の原料として使用して家畜へのリン酸の吸収および環境への排泄量を調査することが、必要である。 24年度は、これらの目的を実施するために、広島大学精密実験圃場での栽培試験および動物実験を行った。栽培試験の結果、フィチン酸含量が低い低フィチン系統が多くの選抜され、さらに、これの系統の生産性および環境適応性の評価を行った。また、収穫したダイズ子実を使って単胃動物である鶏に給与したところ、低フィチン系統で飼育した雛は、普通品種で飼育した雛に比べて増体量が大きく、かつ糞として排出されるリン酸量も低い傾向にあった。以上のように、24年度は、研究課題の最終目的の75%程度が達成でき、本研究の最終年度でもある、25年度に向けて、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終目的は、低フィチンダイズの環境適応性とリン酸資源の有効活用技術の開発である。25年度は 1)24年までに得られた系統の中から収量性と環境適応性の高い系統を選抜するために、圃場での発芽率、収量性および品質を詳細に解析する。2)精密実験圃場で栽培・収穫した低フィチンダイズと高フィチンダイズで鶏用の配合飼料を調製し、各飼料の全リン酸、フィチン酸、粗たんぱく質、粗脂肪、粗灰分、ミネラルなどの成分等を解析することによって、飼料標準に基づいて鶏に最適な飼料を作成する。さらに、調製した飼料の消化率などにフィチン酸がどのような影響を及ぼすかをブロイラーを用いて評価する。3)低フィチン飼料をブロイラーに給与し、給与期間、定期的に鶏の生体重や血液中のミネラル濃度、産卵率などを測定し、低フィチンダイズがブロイラーの生理代謝機能にどのような影響を及ぼすかを詳細に調査する。4)3)の実験時に得られた糞のリン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅濃度を定期的に分析し、鶏における無機成分の利用効率及び環境への排泄量を評価する。さらに、排泄された鶏糞を用いてコマツナを栽培し、低フィチン鶏糞の肥料資材としての有効性について評価すると同時に地下水に排出されるリン酸濃度などを測定する。 以上の結果を総合して、低フィチンダイズの環境適応性とリン酸資源の有効活用技術の開発を行う。
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Research Products
(2 results)