2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23380047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有岡 学 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20242159)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼA2 / リン脂質 / MAPキナーゼ / 生存・分化 |
Research Abstract |
課題1 麹菌細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)様遺伝子AoplaA過剰発現株の表現型解析 前年度の結果から、野生型AoPlaAを高発現する麹菌株はコントロール株に比べて生育が遅延すること、予想活性中心の変異であるSer266Ala置換型AoPlaAの高発現では生育の遅延を引き起こさないことが分かった。これらのタンパク質の局在をEGFPとの融合タンパク質を用いて調べたところ、両者ともミトコンドリアへの局在が観察された。また、タンパク質量を抗GFP抗体を用いて調べたところ、両者に差はなかった。従ってSer266Ala置換型AoPlaAの高発現が生育遅延を引き起こさないのは、このタンパク質が誤局在したり発現レベルが低いためではなく、酵素活性を持たないためであること、即ちAoplaA高発現株の生育遅延がAoPlaAの酵素活性によって基質が過剰に分解されためであることが強く示唆された。 課題2 神経栄養因子とリゾリン脂質の協調的作用 前年度に引き続き、リゾホスファチジルコリン(LPC)が神経栄養因子NGFによって引き起こされるMAPKの活性化を亢進する現象の解析を行った。NGFの下流ではMAPK以外にAktの活性化(リン酸化)も誘導されるが、LPCはこの過程も増強した。LPCがどの段階に作用するかをMAPKの上流因子について調べたところ、LPCによってNGFの受容体であるTrkAの活性化が亢進することが分かった。一方、LPCは上皮増殖因子EGFによるEGF受容体の活性化やインスリン様増殖因子によるその受容体の活性化には作用しなかった。続いてTrkAとEGF受容体のキメラタンパク質を異種発現させた細胞を用いた解析を行い、LPCがTrkAの細胞外ドメインを介してそのNGFによる活性化を増強することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1では、予定していた活性中心変異タンパク質の局在解析やウエスタンブロット解析を行い、変異タンパク質もミトコンドリアに局在すること、発現量が野生型と同程度であることが明らかとなった。これらの結果から、AoPlaAタンパク質の高発現による基質の過剰な分解が生育遅延の原因であること、即ちAoPlaAがミトコンドリアのリン脂質に作用してその機能に重要な役割を果たしているとの示唆が得られた。課題2では、LPCの作用がNGF-TrkA経路に特異的なものであることがわかったが、それがTrkAの特定の領域を介したものであることが示され、LPCとTrkA細胞外ドメインとの機能的相互作用が強く示唆された。これはTrkAの活性制御における新規な知見であり、今後より詳細に解析すべき価値のある課題であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
特段の変更は必要ないので、計画通り研究を遂行する予定である。課題1ではAoPlaAタンパク質の基質を様々なリン脂質を基質に用いたin vitroの酵素アッセイにより同定し、それがAoPlaAの過剰発現で減少することを確認し、このリン脂質がミトコンドリアのどのような機能に重要であるかを調べる。課題2ではLPCがNGFとTrkA細胞外ドメインとの結合を安定化するかどうかを表面プラズモン共鳴などの実験手法を用いて解析する。また、コントロール実験としてEGFとEGF受容体との結合へのLPCの作用を同様の手法で検討する。
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