2012 Fiscal Year Annual Research Report
基質結合タンパク質と巨大分子特異的ABCインポーターとの複合体の構造と機能
Project/Area Number |
23380049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 幸作 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90142299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 渉 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30273519)
三上 文三 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40135611)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ABCトランスポーター / 基質結合タンパク質 / アルギン酸 / スフィンゴモナス属細菌 / X線結晶構造解析 / プロテオリポソーム再構成系 / ヘテロ多糖 / 高分子輸送 |
Research Abstract |
アルギン酸はマンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)から構成されるヘテロ多糖である。その分子内には、MのみからなるMブロック、GのみからなるGブロック、及び両者がランダムに結合したMGブロックが存在する。グラム陰性スフィンゴモナス属細菌A1株は、何れのM/G組成のアルギン酸も良好に資化する。そのため、アルギン酸の輸送と分解に関わるA1株の各タンパク質は、MとGの両方を認識できることが示唆された。本年度は、ペリプラズムに局在するアルギン酸結合タンパク質AlgQ1とAlgQ2について、MとGの認識機構を解析した。種々のM/G組成のアルギン酸オリゴ糖に対するAlgQ1とAlgQ2の親和性は、構成糖比には影響されなかった。また、AlgQ1と種々のアルギン酸オリゴ糖との複合体の立体構造をX線結晶構造解析により決定した結果、オリゴ糖のカルボキシル基は特定残基により特異的に認識されるのに対し、水酸基は柔軟に認識されることが分かった。以上のことから、アルギン酸結合タンパク質はMとGの両方と結合する構造特性を示すことが明らかになった。 ABCインポーターのX線結晶構造解析を進めた。これまでに、AlgQ2の存在下でABCインポーターを結晶化し、ABCインポーター複合体(AlgQ2/AlgM1-AlgM2/AlgS-AlgS)の主鎖構造を明らかにしている。本年度は、各アミノ酸残基の配置を決定した。メチオニンの硫黄原子をセレンに置換した変異体結晶を用いて、異常分散によりセレンの位置を同定した。セレンを目印として、モデルを修正したところ、構造精密化が改善された。ABCインポーター(特に膜貫通ドメイン)の内部(基質通過部位)を調べたところ、荷電性残基が多く配置していることが分かった。このような荷電性アミノ酸残基の配置が、酸性糖であるアルギン酸の取り込みに重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラム陰性スフィンゴモナス属細菌A1株は、M/G組成にかかわらず全てのアルギン酸を資化することができる。アルギン酸の輸送に関わる基質結合タンパク質の構造機能解析を進めることにより、基質に含まれるMとGの両方を認識できる機構を原子レベルで明らかにすることができた。 構造決定困難な膜輸送体であるABCインポーターについて、基質結合タンパク質と結合させることにより可溶性を上昇させ、良質な結晶が得られた。また、セレノメチオニン誘導体を用いた結晶も調製することができた。両結晶から側鎖を識別するのに十分な分解能のX線回折データが得られ、ABCインポーターと基質結合タンパク質との複合体の構造を決定するに至った。また、得られた構造から、酸性多糖であるアルギン酸の認識に関与する荷電性候補残基を見出している。 以上のように、本研究は順調よく進展し、これまで不明であった高分子物質の取り込み機構に関して、原子レベルで理解することができるようになってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
基質結合タンパク質とABCインポーターとの相互作用によるATP加水分解と輸送シグナルの伝達機構を明らかにするため、リポソームにABCインポーター(AlgM1-AlgM2/AlgS-AlgS)を再構成させる。種々の濃度のアルギン酸(多糖やオリゴ糖)存在下で、再構成させたABCインポーターと基質結合タンパク質とを相互作用させ、その際のATP加水分解活性とアルギン酸輸送活性を測定することにより、基質結合タンパク質とABCインポーターとの相互作用及びその輸送機能との相関を明らかにする。アルギン酸輸送活性の測定には、蛍光ラベルを導入した基質を用いる。 基質結合タンパク質とABCインポーターとの相互作用における構造変化を明らかにするため、ABCインポーター単独(サブユニット会合体AlgM1-AlgM2/AlgS-AlgS)の構造解析を進める。会合体では、可溶性タンパク質(AlgQ2)との複合体と比較して、可溶性が低いため、その良質な結晶の調製が困難である。そこで、96穴プレートを用いた多検体結晶化条件の探索を行う。特に、界面活性剤と添加剤(脂質やATPなどの各種リガンド)のスクリーニングにより良質な結晶を取得する。会合体の結晶構造は、複合体の構造をサーチモデルとした分子置換法により決定する。大きな構造変化のため分子置換法で構造が決定できない場合は、セレノメチオニン誘導体を用いた異常分散法により決定する。 細菌ABCインポーターの構造比較を通して、基質のサイズに関わるABCインポーター系の構造的特徴を明らかにする。また、低分子から高分子に至るまで各種物質の取り込みを可能とする細菌ABCインポーターの分子進化について構造的観点から考察する。
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Research Products
(5 results)