2012 Fiscal Year Annual Research Report
ランチビオティック工学の展開:構造生物学的情報に基づく微生物酵素の改変
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23380050
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
園元 謙二 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10154717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 大輔 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80186618)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ランチビオティック / 翻訳後修飾 / nukacin ISK-1 / 異常アミノ酸形成酵素NukM / 基質認識ドメイン / 表面プラズモン共鳴 / 脱水・環化 / リーダーペプチド |
Research Abstract |
ランチビオティックnukacin ISK-1の異常アミノ酸形成酵素NukMの触媒および基質認識ドメインの探索を目的とした。 NukMを1~577アミノ酸残基までのNukMをN末端(NukMN)と578~917アミノ酸残基までのC末端(NukMC)とに分けin vitroにおける活性試験を行い、LC-MSにより反応物の質量変化を解析し、脱水・環化の評価を行った。His-NukMNとの反応物から2脱水・1リン酸化・1環化を生じたHis-NukAと3脱水・1環化を生じたHis-NukAに相当する6価のピークが確認できた。このことからNukMのN末端は単独でも脱水、リン酸化、環化活性を持つことが確認できた。また、His-NukMCとの反応物からは何の修飾も生じていないHis-NukAに相当する6価のピークが確認できた。さらに、His-NukMNとHis-NukMCとの反応物からは、His-NukMNのみと反応させた時と同様の結果が得られた。このことからNukMのC末端は単独でもNukMN存在下でも触媒反応を示さないことがわかった。しかしながら、NukMのN末端だけでは全長のNukMのような完全修飾は行うことはできなかったため、完全修飾のためにはC末端の存在も不可欠であると推察された。 表面プラズモン共鳴の実験結果からは、NukM、NukMNどちらもNukAとの親和性が最も高く、nukacin ISK-1との親和性は極めて低いことが明らかとなった。また、NukMCはすべてのペプチドに対して相互作用を示さなかった。リーダーペプチドを持たないnukacin ISK-1の親和性が著しく低下したことから、NukMがリーダーペプチドを認識していることが示唆され、特に、NukMのN末端が基質認識(リーダー認識)に関与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の作成段階で、予想される問題点を明確にしていたことと、数値目標を定め多方面からの検討を柔軟に行ったことが順調に進展する結果となった。また、研究代表者と分担者が互いの専門領域で柔軟に対処したことも大きな要因と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
①異常アミノ酸形成酵素NukMの高次構造解析 NukMの大腸菌における大量発現系を構築し、同時にNukMの精製条件をさらに検討し、結晶構造解析に必要な精製度、収量のNukMを得る。10 mg/ml程度のサンプルを得ることを目標とする。さらにタンパク質結晶化条件検討を行い、X線回折実験が可能な結晶を取得する。 ②NukMによる抗菌ペプチドの機能改変 異常アミノ酸を導入する具体的なペプチドは、初段階として活性評価が容易な既存の抗菌ペプチドを標的とする。異常アミノ酸導入のために、標的ペプチドのN末端にNukMの認識に必須なリーダーペプチドを融合させ(修飾反応後に除去するためにfactor Xaなどのユニークなプロテアーゼサイトを導入しておく)、さらに異常アミノ酸形成に必要なセリン残基およびシステイン残基を任意の位置に導入し、大腸菌により発現調製する。In vitroで修飾反応を行い修飾の有無を解析する。 ③NukMの機能改変 NukMの基質特異性が高い場合は、様々なペプチドに自由自在に異常アミノ酸を導入するという観点からは大きな弊害となる。そこで、②で修飾できなかったペプチドを基準として、①により得られる高次構造情報を基にして合理的にNukMに変異を導入することでその基質特異性を拡張する。例えばNukMと基質ペプチドNukAとの複合体の立体構造からNukMの基質結合部位および触媒部位の詳細な構造を得ることができるため、この領域のアミノ酸に変異を導入することで改変を試みる。得られたNukM改変体の立体構造は、ホモロジーモデリングによりin silicoで予測し、基質結合部位周辺の構造と基質認識との関連性を明らかにする。標的ペプチドの種類を増やし、このサイクルを繰り返すことで、NukMを活用したランチビオティック工学の中核を担うマルチな異常アミノ酸形成酵素の創成を目指す。
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Research Products
(5 results)