2011 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸鎖酵素複合体-Iの鍵サブユニットND1の機能解明
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23380064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三芳 秀人 京都大学, 農学研究科, 教授 (20190829)
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Keywords | 呼吸鎖複合体-I / ND1サブユニット / 呼吸鎖阻害剤 / 光親和性標識 |
Research Abstract |
呼吸鎖酵素複合体-Iのプロトン輸送メカニズムを理解する上で、膜ドメインの機能を明らかにすることは必須である。この点で、模ドメインにユビキノンや阻害剤の結合部位がいくつ存在するのかを明らかにすることが緊急の課題であるが、2003年にNakamaruらによって発表された論文は、複合体-Iの研究領域を混乱させている。彼女らの結論は、fenpyroximateは膜ドメインの末端に位置するND5サブユニットに結合するというものであるが、この見解は我々が主張してきた「阻害剤の結合部位は、ND1、49k、およびPSSTサブユニットの境界領域に存在する」という見解と矛盾する。 そこで本年度は、この矛盾点に決着を付けるため、fenpyroximateの光反応性プローブを2種類合成し、光親和性標識によってfenpyroximateの結合部位を同定することを目標として研究を実施した。各種の電気泳動法と質量分析を駆使して解析を行ったた結果、fenpyroximateはピラゾール環部をPSSTサブユニットに、アルキル側鎖部を49kサブユニットに配向させるようにして両サブユニットの境界に結合していることを明らかにした。また、PSSTサブユニットおよび49kサブユニットにおける結合部位は、それぞれSer43-Arg66およびAsp160-Arg174であることがわかった。この結果から、Nakamaruらの結果は間違いであり、fenpyroximateも他の複合体-I阻害剤と同様に、ND1、49k、およびPSSTサブユニットから構成されるいわゆる"キノン結合ポケット"に結合することが明らかになった。換言すると、複合体-Iの膜ドメインには阻害剤(キノン)結合部位は1箇所しかないと結論できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合体-Iの膜ドメインの機能を理解する上で、Nakamaruらの結果(2003年)は長年に渡って疑問視されてきた。本年度にこれを明確に否定する成果が得られたことは、ほぼ満足のいく成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
複合体-IのND1サブユニットに作用する阻害剤の結合部位を、アミノ酸レベルで同定することを次の目標にする。具体的には、ND1サブユニットに作用することがわかっているアセトゲニンの光反応性プローブを合成し、光親和性標識実験を実施する。標識アミノ酸の同定には、クリックケミストリーで導入したタグ分子を活用する。
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Research Products
(3 results)