2012 Fiscal Year Annual Research Report
特異な構造を持つ複合型糖鎖の合成とその糖タンパク質合成への応用
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23380065
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北條 裕信 東海大学, 工学部, 教授 (00209214)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 糖タンパク質 / 化学合成 / LacdiNAc / ペプチドチオエステル |
Research Abstract |
本研究は、ほ乳類の糖鎖としては特異な構造であるGalNAc-GlcNAc (LacdiNAc)を持つ糖タンパク質glycodelinの合成を行い、その機能解明を推進する目的で行っている。そのため、LacdiNAcを持つ複合型糖鎖の合成ルートの確立、ペプチド鎖への糖鎖の導入方法、またポリペプチド鎖の構築、さらに正しい立体構造構築方法の検討を通して、glycodelinの全合成を達成することを目標とする。 本年度は、glycodelinのポリペプチド鎖の化学合成を行った。昨年度合成したLacdiNAcを持つ糖鎖を、ポリペプチド鎖の合成完了後に酵素を用いて導入するため、ポリペプチド鎖側には還元末端糖GlcNAcを導入することとした。 まずポリペプチド鎖を4つのセグメントに分割して固相法により調製した。後にNative chemical ligation(NCL)法による縮合を行うため、N末端側の3つのセグメントについては、ペプチドのC末端をチオエステルとして合成した。その際、我々の開発したN-アルキルシステインを用いるチオエステル化法を用いた。糖鎖結合部位では還元末端等であるGlcNAcを持つAsn誘導体を導入した。固相合成、HPLCによる精製後4つのセグメントを得た。 ついでNCL法によりペプチド鎖を縮合した。まず、N末端側2つのセグメントを縮合した。N末端側にはNCL法に必須となるCys残基がないため、Met残基でのNCLを行った。そのため、ホモシステイン残基でのLigationを行った後メチル化によりMet残基へと変換した。ついでC末端側の2つを縮合し、最後にNCL後の両方のセグメント同士を縮合して162残基のglycodelin全長の合成に成功した。今後、フォールディングと糖鎖転移を行いLacdiNAcを持つglycodelinの合成を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はLacdiNAcの全合成に必要なポリペプチド鎖の構築を行うことができ、おおむね順調に進展していると考えている。今回の合成で最大の懸案であったのは、N末端側の2つのセグメント同士の縮合である。ここではnative chemical ligation法で必須となるCys残基がなかったため、Met残基でのligationを試みた。そのためホモシステイン残基でligationを行った後、メチル化を経てMet残基へと変換した。メチル化での種々の副反応が懸念されたが、ほとんど起こらず目的物を得ることができた。残りのLigationも効率よく進行し、glycodelin全長の合成を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フォールディングと糖鎖転移反応を経てLacdiNAcを持つglycodelinを全合成する予定である。一番懸念されるのは、フォールディングの不具合である。この糖タンパク質がダイマーであるため、立体構造形成には2つのタンパク質間の相互作用が必要であると考えられる。このため、モノマータンパク質のフォールディングに用いられる方法ではうまく行かないのではないかと考えられる。フォールディングの際のタンパク質濃度、酸化法、シャペロンの使用等を種々検討してnative型のコンフォメーションを形成する方法を確立したい。 もう一つのポイントはいかに効率よく糖転移をさせるかという点である。最近市販されたEndo-M変異体(Glycosynthase)による転移は生成物の加水分解もなく、高収率で目的物を与えることが知られている。しかし、酵素反応であるため、サンプルの溶解性が収率を大きく左右するようである。そこで、糖転移反応時の変性剤や有機溶媒の濃度、さらにサンプル濃度やバッファーの種類等を種々検討して高収率での糖転移を達成したい。
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Research Products
(9 results)