2012 Fiscal Year Annual Research Report
臨床分離脳腫瘍由来のがん幹細胞に特異的に作用する化合物の探索研究
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23380067
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
新家 一男 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディシナル情報研究センター, 上級主任研究員 (20251481)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 膠芽腫グリオブラストーマ / スクリーニング / がん幹細胞 / sphere形成 / sphere特異的細胞死 |
Research Abstract |
がん幹細胞は、癌化学療法の重要なターゲットであるのも拘わらず、スクリーニングに用いるのは困難であった。このような中、最も悪性度の高いがんのひとつである、膠芽腫グリオブラストーマ (GBM) は細胞塊 (sphere) を形成しながら増殖する、安定ながん幹細胞であることが見出された。 平成24年度は、146NS (proneural由来 ) および1123 (mesenchymal由来) の二種類の患者由来のGBM細胞を用いて、sphere形成の有無を指標とした、sphere形成阻害剤のスクリーニングを行った。 本アッセイ系を用いて、約5万ライブラリーについてスクリーニングした結果、146NS細胞で12化合物、および1123細胞で15化合物を見出した。これらのヒット化合物のうち、アクチン重合阻害剤であるcytochalasin系化合物、PKA活性化化合物であるインドールラクトン系化合物、、ヒストンメチル化阻害活性を示すverticillin系化合物、mocimycinおよびdestruxin系化合物が146NSおよび1123細胞で活性を示す共通ヒットとして見出された。 その他の活性物質として、共通構造は持たないが、大環状ペプチド系化合物がヒット化合物として見出された。両細胞は、sphereの形態に違いがあるが、1123細胞ではマクロライド系化合物もヒット化合物として活性を示した。今後は、これらの化合物の作用機作からsphere形成に関わる共通因子あるいは共通カスケードを明らかにすることにより、がん幹細胞機能維持に深く関与する細胞塊形成機構を解明し、新たな薬剤開発ターゲットを見出すことが期待される。 また、今年度は平成25年度に実施するスクリーニング系の検証として、sphere状態にある細胞のみに作用する化合物探索のアッセイ系の構築を行うと共に、予備スクリーニングを開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然物ライブラリーを用いたスクリーニングにより、sphere形成を特異的に阻害する化合物を複数見出している。これらの化合物に関しては、それらの作用機作から論理的に説明することが出来うる化合物群であり、本アッセイ系の正当性を示している。残念ながら、弱い細胞毒性とsphere形成阻害活性との差を明確に区別することが困難であったため、30万ライブラリーを用いての大規模スクリーニングの実施は出来なかったが、見出した化合物群は費やした研究費に十分見合えるものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、由来の異なる二種類のGBM細胞を用いて、sphere状態にある細胞にのみ特異的に作用する化合物のスクリーニングを実施する。これにより、既に細胞塊ができた生体内に近い状態にある癌細胞、しかもがん幹細胞様性質を維持した癌細胞に有効な薬剤リード化合物の発見が期待される。
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