2012 Fiscal Year Annual Research Report
体脂肪蓄積を制御するシンバイオティクス開発の基盤解析
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23380069
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
園山 慶 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90241364)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肥満 / 炎症 / 腸上皮細胞 / 脂肪細胞 / Lactobacillus plantarum |
Research Abstract |
我々が見出した乳酸菌株Lactobacillus plantarum No.14株によるマウスの肥満抑制作用ならびに脂肪組織炎症およびインスリン抵抗性抑制作用について、メカニズムを以下のように解析した。 I. 脂肪蓄積および脂肪組織炎症を制御する液性シグナル分子の探索 No.14株に曝露する腸粘膜と脂肪組織の間の組織間シグナルの候補として細胞外小胞であるエクソソームに着目して解析した。No.14株投与マウスの血清から超遠心分離法によりエクソソームを分離し、エンドトキシン刺激したマウス腹腔細胞、ならびにマウス前駆脂肪細胞株3T3-L1およびマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞の共培養系(脂肪組織炎症モデル)に添加したところ、炎症性サイトカイン(IL-6およびTNF-alpha)産生を有意に抑制した。これらの結果は、No.14株の脂肪組織炎症抑制効果の少なくとも一部をエクソソームが媒介することを示唆する。また、マウス小腸粘膜からクリプトを分離してオルガノイドを誘導、培養し、Toll様受容体やサイトカインなどの遺伝子発現を解析した。その結果、このオルガノイドは小腸上皮の自然免疫応答を解析するためのモデルとなることが明らかとなった。 II. 脂肪組織炎症に影響するNo.14株の菌体成分の探索 No. 14株が産生する菌体外多糖を分離して3T3-L1細胞およびRAW264.7の共培養系に添加したところ、炎症性サイトカインの産生が抑制されたことから、この菌体外多糖がNo.14株の脂肪組織炎症抑制の活性本体である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳酸菌株Lactobacillus plantarum No.14株によるマウスの肥満抑制作用ならびに脂肪組織炎症およびインスリン抵抗性抑制作用のメカニズムについて、組織間シグナルとして当初は液性因子を想定して解析していたが、中途より細胞外小胞エクソソームに着目して解析を進めたところ、このものによって上記のメカニズムの少なくとも一部を説明することができるようになった。今後は、エクソソームの関与をin vitroおよびin vivoにおいて証明していくことが可能と考えている。 一方、当初メカニズムとして想定していた白色脂肪細胞におけるUCP1の異所性発現については、動物実験において一貫した結果が得られておらず、今後このことについて追究することは困難と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
No.14株の生理機能発現を媒介する腸粘膜ー脂肪組織間シグナルとして細胞外小胞エクソソームに着目し、このことをin vitroおよびin vivoにおいて証明していく。すなわち、マウス小腸より誘導したオルガノイド培養系にNo.14株菌体成分を添加したときに放出されるエクソソームを分離し、脂肪組織炎症モデル(3T3-L1細胞およびRAW264.7細胞の共培養系)に添加して炎症抑制効果を観察する。また、No.14株投与マウスの血清エクソソームを分離し、肥満マウスに投与したときの脂肪組織における脂肪合成および分解、脂肪組織炎症、ならびにインスリン抵抗性におよぼす影響を観察する。さらに、これらのエクソソームの組成(タンパクおよびmiRNA)を網羅的に解析する。
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