2012 Fiscal Year Annual Research Report
湿地生態系における樹木を介した土壌メタンの放出機構の解明
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23380090
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
寺澤 和彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30414262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 成宏 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, その他 (30353577)
阪田 匡司 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, その他 (50353701)
山本 福壽 鳥取大学, 農学部, 教授 (60112322)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 温室効果ガス / メタンフラックス / 冷温帯湿地林 / ガス輸送 / 通気組織 |
Research Abstract |
湿地からの土壌メタンの放出機構において、水生植物や草本などの植物体内部の通気組織が重要な放出経路となることが従来から知られてきた。最近、樹木も土壌メタンの放出経路となりうることが報告され、その放出機構と全球メタン収支への影響について関心が高まっている。本研究では、冷温帯湿地林の林冠木を対象として、①樹体内部のメタン輸送経路と輸送様式、②メタン放出量に及ぼす環境要因、の解明に取り組んでいる。平成24年度は、23年度に引き続き、北海道中央部のヤチダモ林において樹幹表面でのメタンフラックスおよび環境要因の観測を行い、メタン放出量の律速要因について検討した。また岡山県蒜山の渓畔過湿地のヤチダモ植栽木において、樹幹からのメタン放出量を測定するとともに根系の解剖学的観察を行った。主な成果は次のとおり。 1.樹幹からのメタン放出量及びその季節的変動(5月~10月)は個体による違いが大きかった。10倍以上の放出量の変動を示す個体がある一方で、ほとんど季節的に変動しない個体もみられた。 2.樹冠の着葉状態(開葉前・着葉期・落葉後)とメタン放出量との間に対応はみられず、樹体内でのメタン輸送への蒸散流の関与はないか、きわめて小さいと考えられた。 3.地下水溶存メタン濃度及びその季節的変動は調査地内の位置によって大きく異なった。地下水位が高くヨシ群落が優占する地点では、約10000μg L-1のきわめて高い値でほぼ一定であったのに対して、地下水位が相対的に低くオニシモツケなどが優占する地点では、季節の進行に伴って1~2000μg L-1に上昇した。 4.蒜山のヤチダモにおける樹幹からのメタン放出量は北海道での観測値に比べて著しく小さく、根系の組織構造に明瞭な破生型の通気組織は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地観測・調査・分析を計画どおりに実施し、目的達成のために有効なデータを蓄積した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、メタン放出に関わる要因の検討を進めて律速要因の解析を行う。また、樹体内部のメタン輸送経路と輸送様式に関して、メタンの炭素安定同位体比の分析およびヤチダモの樹体内部の木材組織の解剖学的特徴の観察を進める。
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Research Products
(1 results)