2011 Fiscal Year Annual Research Report
マツ材線虫病の病原体マツノザイセンチュウを進化させたのはビロウドカミキリか?
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23380092
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
前原 紀敏 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (20343808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 克典 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (40343785)
相川 拓也 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (90343805)
神崎 菜摘 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70435585)
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Keywords | 昆虫 / 進化 / 線虫 / 生物間相互作用 |
Research Abstract |
研究代表者および分担者は、マツノザイセンチュウ近縁種群の分子系統解析結果より、マツ材線虫病の病原体マツノザイセンチュウは、広葉樹を寄主とする線虫から進化してきたということを明らかにしている。本研究の目的は、「マツノザイセンチュウ近縁種群の広葉樹から針葉樹への進化のかけ橋になったのは、ビロウドカミキリ、もしくはその祖先種である」という仮説を検証し、マツノザイセンチュウの進化の過程を解明することである。 1.野外でビロウドカミキリが媒介するマツノザイセンチュウ近縁種群の探索 ビロウドカミキリ成虫からマツノザイセンチュウ近縁種群の一種であるBursaphelenchus douiを検出した。 2.ビロウドカミキリの人工飼育法の確立・カミキリムシの人工飼育・人工蛹室の改良 これまで飼育法が全く研究されてこなかったビロウドカミキリの成虫飼育・交尾・産卵・幼虫飼育の方法を確立した。併せて、マツノマダラカミキリ、キボシカミキリ、センノカミキリの幼虫を人工飼料で飼育した。また、開発済みのマツ材片を用いたマツノマダラカミキリ用の人工蛹室を、マツノマダラカミキリ以外の広葉樹のカミキリムシにも適用可能な寒天培地を用いた人工蛹室に改良した。 3.ビロウドカミキリとマツノザイセンチュウ近縁種群との親和性の解明、および他のヒゲナガカミキリ族との比較 2.で改良した人工蛹室を用いることで、ビロウドカミキリは、マツノザイセンチュウ近縁種群の中でB.douiと高い親和性を示すことを明らかにした。また、B.douiは、キボシカミキリやセンノカミキリとも高い親和性を示し、マツノマダラカミキリとも親和性を示した。1.の結果と併せて考えると、ビロウドカミキリによって、B.douiが広葉樹から針葉樹へと運ばれてきた可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度にして、ビロウドカミキリによって広葉樹から針葉樹へと運ばれてきたマツノザイセンチュウ近縁種群の有力候補として、B,douiを挙げることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果よりビロウドカミキリによって広葉樹から針葉樹へと運ばれてきたと考えられるB.douiについて、新たな寄主樹木への適応の可能性を調べるための実験系を考案する必要がある。このことは、マツノマダラカミキリ-マツノザイセンチュウの組み合わせに対してこれまで用いられてきた実験系を参考にすれば、可能であると考えている。
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Research Products
(3 results)