2011 Fiscal Year Annual Research Report
樹木個体呼吸スケーリングから見た個体群構造とCO2収支の時間推移
Project/Area Number |
23380094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Field |
Forest science
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
森 茂太 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, チーム長 (60353885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 秋男 琉球大学, 理学部, 教授 (90126889)
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Keywords | 植物個体呼吸 / スケーリング / CO2収支 / 時間推移 |
Research Abstract |
「樹木個体」は「環境適応、繁殖、進化の単位」であり、さらにその個体生理学的性質は森林全体のCO2収支などを評価する重要単位でもある。一般に、「樹木個体」は孤立せず個体間競争のある森林を形成し、「密度効果」によって、小個体は枯死し、大個体は成長拡大する。本提案では、林齢とともに密度減少する森林で個体(根を含む)呼吸を直接測定し「個体呼吸一個体サイズの関係の時間推移」を明らかにする。さらに、この時間推移を基に森林生態系全体の個体群構造(密度、個体サイズ頻度分布など)や個体レベルのCO2収支の時間推移まで明らかにすることを目的とした。 本年度は、林齢のことなるブナ2林分、スギ2林分からそれぞれ約20個体合計100個体の根を含む個体呼吸を夏季の成長期に測定した。測定個体数を多めに設定することで樹冠閉鎖部だけではなく、林縁、ギャップなどを含む時間空間的にヘテロな環境に応じた個体呼吸を評価した。 その結果ブナ、スギの群落内の大個体で必ずしも「個体重量当たりの呼吸」(以下、RWとする)は高くなかった。樹冠下の中型個体のRWは低く競争で枯死する個体が多い。一方、林縁やギャップ下の成長の遅い小個体のRWはスギ、ブナともに各群落で高かった。自己間引きのある群落では、樹木個体サイズとRWの関係は両対数軸上で下に凸の非線形で表現できた。すなわち、林内の時間空間的に不均質な環境(林縁からの斜光、ギャップ光など)で不定枝、不定根を持った小個体のRWは優勢大個体よりも高く、必ずしも競争による敗者ではなかった。 このように個体呼吸から個体間関係を検討した場合には、従来の競争排他原理とは異なる個体間関係の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1林分20個体、5林分で合計100個体の根を含む呼吸を測定できた。時間ととともに個体呼吸と重量の関係がどのような推移をするかおおむね傾向を把握できた。また、1林分で多数個体を測定したことで個体が森林内の不均質環境に適応した代謝調整を行っていることも明らかになった。また、平行して行っている森林の密度推移など森林構造の時間推移などもモデル化できた。
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Strategy for Future Research Activity |
個体呼吸測定対象個体の表面積などの計測を継続しており、これらの計測結果を合わせて個体呼吸の環境適応能力を個体呼吸・形態の可塑性からより詳細な検討を続ける予定である。また、今後は個体生理的な機能と密度などの構造の双方を結び付けて研究を進める予定である。
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Research Products
(13 results)