2012 Fiscal Year Annual Research Report
樹木個体呼吸スケーリングから見た個体群構造とCO2収支の時間推移
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23380094
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
森 茂太 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, チーム長 (60353885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 秋男 琉球大学, 理学部, 教授 (90126889)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 個体呼吸 / メタボリックスケーリング / 密度効果 / 自己間引き |
Research Abstract |
「樹木個体」は「環境適応、繁殖、進化の単位」であり、さらにその個体生理学的性質は森林全体のCO2収支などを評価する重要単位でもある。本提案では、林齢とともに密度減少する森林で個体(根を含む)呼吸を直接測定し「個体呼吸-個体サイズの関係の時間推移」を明らかにする。さらに、この時間推移を基に森林生態系全体の個体群構造(密度、個体サイズ頻度分布など)や個体レベルのCO2収支の時間推移まで明らかにすることを目的とした。 林齢のことなるブナ3群落、スギ群落からそれぞれ約20個体合計100個体の根を含む個体呼吸を夏季の成長期に測定した。当初、実生から巨木まで幅広い個体サイズで個体呼吸を比較した場合には、落葉樹で葉の回転速度の高いブナ群落で個体呼吸が高く、葉の回転速度の低いスギ群落で個体呼吸が低い傾向が観察されると考えた。しかし、実際は同じ個体重量では個体呼吸に差がほとんど見られなかった。その理由は、サイズの大きな個体で構成された群落では自己間引きが起こり、ここに光環境などの不均一環境ができギャップや林縁に傘型の小個体が存在する。さらに群落内の込み合った個所には自己間引で枯死寸前の個体が観察される。こうした光の不均一環境に応じて個体呼吸は大きな可塑性を示すことがブナ群落でもスギ群落でも観察された。これらの可塑性がスギとブナの系統間差を吸収したため、両者の個体呼吸には大きな差がほとんど見られなかった。 一方で、同じ光環境に生育する実生レベルの個体呼吸は内生菌などの菌類によって個体呼吸が大きな影響を受けてシフトすることもわかりつつある。以上の様に実生段階と成木段階では個体呼吸の主要制御要因も変化することが明らかとなりつつある。樹木は大きな幅で成長することを考えると生長段階に応じた制御要因(物理環境、生物環境要因)の変化を考慮しつつ、個体発生学的な視点から分析することも必要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り研究計画は進捗しており、林齢など樹木サイズに応じて幅広いサイズで多数の個体呼吸の測定を行ってきた。しかし、当初予想した系統間の差は小さく、個体呼吸と個体形態は森林内の不均一環境に応じて大きな可塑性を持っていることが明らかとなった。また、マングローブ林では自己間引きの起こり方を長年のモニタリングから同一林分でモニタリングした結果、時間方向での森林構造の推移も明らかとなってきた。一方で、実生レベルの呼吸測定では内生菌などの影響が個体呼吸や形態に予想以上に影響をあたえ、個体呼吸スケーリングに長期にわたり関与することも考えられる。 さらに、系統間差や地域間で個体呼吸には大きな差がほとんどないことも明らかとなりつつある。こうした疑問は、現在のメタデータ分析では未解決の課題であり、これらに一定の回答を与えた点では十分な成果が上がったと自己評価できる。成果は、Advances in Ecologcial Rearchなどに発表され、主要な国際ジャーナルで引用されるとともにメールなどでの多くの問い合わせを受け、学会からシンポジウムなどでの招待講演を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
実生から巨木までで幅広く成長する樹木の個体呼吸の制御要因は成長段階に応じて変化することが明らかとなりつつある。特に実生段階の成長は成長解析における初期値として重要である。この点を踏まえ、これまで連携研究者であった筑波大学準教授の山路恵子氏を分担者として当課題に追加する必要が生じた。 また、成長解析に関しては森林総合研究所の西園氏に引き続き連携研究者としてサポートを要請する予定である。 以上の、対応を柔軟にとることで当該課題は順調に遂行されると考えられる。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] Linkage between above- and underground parts of whole-plant metabolism from seedlings to giant trees2012
Author(s)
S Mori, A Ishida, K Yamaji, T Nishizono, k Koyama, A.T.M. R. Hoque, Md. Kamruzzaman, R Suwa, A Hagihara, A Osawa, SG Prokushikin, OV Masyagina
Organizer
Gordon Resarch Conference
Place of Presentation
University of New England (ビットフォード、メリーランド州、アメリカ)
Year and Date
20120722-20120727