2011 Fiscal Year Annual Research Report
レーザーマイクロダイセクション法による樹木細胞壁の形成機構の局所解析
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23380103
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 宇外 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70337707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 久 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (80343812)
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Keywords | 樹木細胞生理 / 遺伝子 / 森林工学 |
Research Abstract |
平成23年度は、スギにおいて発現するチューブリンの塩基配列およびアミノ酸配列の解析、ならびにレーザーマイクロダイセクション(LMD)法を利用したスギ形成層帯の遺伝子発現定量解析の方法の検討を行った。スギでは、5つのα-チューブリン遺伝子と4つのβ-チューブリン遺伝子が存在することが明らかとなった。α-チューブリン遺伝子の塩基配列をもとに翻訳配列と立体構造予測を行った結果、5つのアイソフォームの間で82番目のアミノ酸が互いに異なり、かつこのアミノ酸はチューブリン分子の外側に配置していると予測された。これらより、82番目のアミノ酸をエピトープとするモノクローナル抗体を用いることで、スギ形成層の分化過程におけるα-チューブリンのアイソフォームの発現とその局在を視覚的に明らかにできると考えられた。β-チューブリン遺伝子のうち2遺伝子は同じアミノ酸配列をコードしていたことから、このアイソフォームは3つであることが分かった。一方、この3つのアイソフォームの間でアミノ酸配列の相同性は非常に高かったことから、抗体を用いたβ-チューブリンのアイソフォームの発現解析は困難であると考えられた。5~6月にかけて形成層帯を含むスギ・ブロック試料を採取・急速凍結し、凍結ミクロトームを用いて凍結切片を作製した。これを凍結乾燥したのち、LMDを用いて形成層細胞試料を回収した。LMDによる細胞試料回収条件として、パルス周波数を230Hz程度とし、切削速度を遅くすることで、試料損傷を低減することができた。また、ビーム口径については、少なくとも10μm程度の大きさが必要であった。回収された細胞試料から全RNAを抽出し、18SrRNAの発現を確認した。以上より、LMD法を採用することでスギ形成層細胞のチューブリン遺伝子の局所的な発現解析が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の解析の対象であるスギ・チューブリンについて、その塩基配列およびアミノ酸配列を同定することができた。また、LMD法によるスギ形成層帯のチューブリン遺伝子の発現解析の方法について,細胞試料採取などの方法を定めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに得られた成果を基礎として、平成24年度は、スギ形成層帯におけるチューブリン・アイソフォームの発現の局所解析を進める。実験試料としては、立木から採取した形成層試料に加え、人工気象室で生育させるスギ苗木から採取したものを用いる。これにより、形成層細胞の分化および成熟の過程を人為的に制御しながら効果的に試料を採取することができ、細胞壁形成とチューブリン・アイソフォームの発現の時系列的な関係を定量的に明らかにできる。また、チューブリン・アイソフォームのモノクローナル抗体を用いることで、これらアイソフォームの局在を視覚的に明らかにできる。
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Research Products
(1 results)