2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23380104
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
林 隆久 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (70231529)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ヘミセルロース |
Research Abstract |
植物細胞壁XTH(xyloglucan endotransglycosylase/hydrolase)は、XET(xyloglucan endotransglycosylase)とXEH(xyloglucan endohydolase)をコードしている。XETは、キシログルカンの繋ぎ換え反応を触媒し、一方、XEHは、キシログルカンの加水分解反応を触媒する。これらの酵素は細胞壁の構築や再編過程で重要な役割を担っている。Arabidopsis thalianaには、XTHをコードする遺伝子が33個有り、3つのファミリーに分けられる。本研究は、接触刺激によって、発現が誘導される遺伝子、「touch gene」として報告されているAt5g57560の酵母recombinant xyloglucan endotransglycosylaseを作出することを目的とした。 At5g57560のcDNAを酵母発現ベクターのpPICZαC(導入された遺伝子産物は培地に分泌される)に導入し、コンストラクトを作成した。酵母へ形質転換を行い、培養液から 全タンパク質を硫安塩析によって調製し、crude protein に含まれるXET活性を粘度計を使用して測定した。基質として、xyloglucan、及び合成oligo saccharide (Heptasaccharide XXXG)を加え、粘度を測定した。4つのコロニー(クローン)の活性を測定した結果、2つのクローンの粘度が低下し、XET活性を持つことが確認された。以上の結果から、酵母リコンビナントXETを作出することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キシログルカンは二次細胞壁には存在しないと考えられてきた。私たちは、野外で4年間生育させた遺伝子組換えポプラ(キシログルカナーゼ(AaXEG2)発現し、キシログルカン量が野生株の25%に減少)の2年生の枝を用い、分化中木部繊維細胞の内腔表面を免疫染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、野生株の分化中木繊維内腔表面にはS3、S2層セルロースミクロフィブリルに沿ってキシログルカン蛍光標識が観察されたが、組換えポプラでは極く低いレベルの標識しか認められなかったことから、キシログルカンは普遍的に二次細胞壁に存在すると推測している(日本木材学会2011)。 この組換えポプラを用いて木部に存在するキシログルカンの機能を解析した。網室で生育させたポプラ(生きているポプラ)の主幹基部に荷重をかけ、力学的特性を調べた結果、組換えポプラのヤング率、及び曲げ強度が野生株に比較して減少した。すなわち、組換えポプラはたわみやすく、強度が弱いことが明らかにされた(日本木材学会2012)。 以上の知見が得られたことから、本研究は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
キシログルカンがセルロースミクロフィブリルをどのような形で架橋しているのか調べる。脱リグニンしたホロセルロースを4% KOHに浸し、ultrasonication bathにて数分間処理すると繊維細胞を単離することができる。これをキシログルカン抗体により免疫染色して観察した結果、キシログルカンを含むゴースト繊維細胞が得られた。次に、このゴースト繊維細胞から24% KOH (セルロース繊維を変性)によりマトリックス多糖を抽出した。4% KOH, 24% KOH 溶出画分をDEAE-Sephadex A-25 陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、リン酸バッファー、1 M塩化ナトリウムの順に溶出した。メチル化分析の結果、4% KOHにはキシログルカンが含まれていなかった。このことから、24% KOH 溶出画分に焦点を当てて、解析を進める。 24% KOH 溶出画分をDEAE-Sephadex A-25 陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、リン酸バッファー、1 M塩化ナトリウムで溶出した画分を、それぞれ中性糖、酸性糖画分とした。野生株、組換え株ともに、中性糖画分の主な成分(90%)はキシランであった。野生株には10%程度のキシログルカンが含まれていた。中性糖をSepharose CL-6B ゲルろ過クロマトグラフィーにかけ、得られた各フラクションについて全糖、キシログルカン、ウロン酸を定量したところ、組換え株の中性糖全糖のサイズが野生株よりも30 kDa低下し、キシログルカンがキシランに結合している可能性が示唆された。この中性糖画分にはウロン酸が存在するため、これがグルクロノキシランのグルクロン酸であるか否かを検討する。酸性糖画分については、僅かなキシログルカンが含まれていた。組換え株の酸性糖全糖のサイズは、野生株と変わらなかった。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Growth and root sucker ability of field-grown transgenic poplars overexpressing xyloglucanase2012
Author(s)
Taniguchi Toru, Ken-ichi Konagaya, Manabu Kurita, Naoki Takata, Katsuaki Ishii, Teiji Kondo, Fumiaki Funahashi, Seiichi Ohta, Tomomi Kaku ,Kei’ichi Baba, Rumi Kaida, Takahisa Hayashi
-
Journal Title
Journal of wood science
Volume: 58
Pages: 550-556
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-