2014 Fiscal Year Annual Research Report
サケの母川水ニオイに対する嗅覚記憶脳内分子に関する研究
Project/Area Number |
23380106
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 宏 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特任教授 (00160177)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯郷 雅之 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10232109)
天野 勝文 北里大学, 水産学部, 教授 (10296428)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | サケ / 母川水ニオイ / 嗅覚記憶 / NMDA受容体 / TRH / GnRH / EOG / Y字水路 |
Outline of Annual Research Achievements |
我国の重要な水産資源であるサケは、稚魚が生まれた川(母川)のニオイを降河時に記銘し、親魚がそのニオイを遡河時に想起して母川回帰する。サケの母川水ニオイに対する嗅覚記憶機構を解明するため、嗅覚記憶に関連する脳内分子を解析する研究を行い、平成26年度は下記のような成果を得た。1.稚魚の母川記銘時のTRHとNMDAの役割:シロザケ稚魚の降河回遊に伴い、TRHa・b遺伝子発現量は千歳ふ化場から放流された直後に上昇し、その後にNMDA受容体必須サブユニットNR1遺伝子が増加することが確認された。TRHおよびT4を腹腔内注射により投与したところ、注射によるストレスの影響により投与群と対照群に有意差は認められなかった。平成27年度は、餌にT4を混ぜてシロザケ稚魚に給餌投与し、電気生理学的に嗅覚応答(EOG)を測定し、NR1遺伝子発現量の変化を観察する。2.親魚の母川遡上時のGnRHとNMDAの役割:ベーリング海から千歳川に回帰するシロザケ親魚のsGnRH-I・II遺伝子発現量は、母川回帰に伴い脳部位ごとに発現量のピークが異なるが増加する傾向がみられ、また雄のみでベーリング海で高い発現量を示す雌雄差も認められた。石狩湾に回帰した海水中のシロザケ親魚のGnRHアナログ(GnRHa)を投与しEOGを測定すると、GnRHa投与群の千歳川河川水に対するEOGが有意に増加し、GnRHにより母川水に対する感受性が増加することが明らかになった。GnRHa投与による脳各部位のNR1遺伝子発現量は、嗅球において増加傾向が認められたが有意差は検出されなかった。3.Pitタグシステムを導入したY字水路の河川水選択行動:Pitタグシステムを導入したY字水路において、千歳川に回帰するシロザケ親魚の千歳川と豊平川のアミノ酸組成に基づき作成した人工河川水の選択行動を解析したところ、人工千歳川河川水への滞在時間が有意に長いことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に行う予定であった3つの研究項目に関する実験は、おおむね順調に進展しており、最終年度である平成27年度の実験の準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度であるので、我国の重要な水産資源であるシロザケを主に用いて、千歳ふ化場から放流され石狩湾までの降河回遊にともなう母川記銘、およびベーリング海から千歳ふ化場までの産卵回遊にともなう母川回帰機構を、NMDA受容体必須サブユニットNR1遺伝子発現量および河川水に対する嗅覚応答(EOG)を指標として、TRHおよびGnRHが母川記銘・回帰機構をどのようにコントロールしているかを明らかにする予定である。
|
Research Products
(11 results)