2011 Fiscal Year Annual Research Report
細菌の外膜タンパク質GAPDHによる広範な感染症の予防
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23380111
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
川合 研兒 愛媛大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60127925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 俊一郎 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (80325406)
今城 雅之 高知大学, 医歯学系, 助教 (20565741)
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Keywords | GAPDH / 魚病 / 免疫 |
Research Abstract |
ブリのノカルディア症は弱抗酸性で分枝形態を示すグラム陽性細菌Nocardia seriolaeを原因菌とし、薬剤による治療が困難な養殖ブリの難病とされる。GAPDHによる免疫の効果を図るためには攻撃試験による効果判定が必須であるが、低菌数感染から始まる感染成立には長期間の飼育を要する。そこで、感染の過程をより短期間でモニタリングする手法として、実験感染後の菌の体内消長をリアルタイムPCRで測定する技術の確立を目指した。 供試魚には平均魚体重約50gのブリを用い、供試菌株には養殖ブリから分離した強毒株であるN-2927株とやや弱毒株であるU-1株の2株のN. seriolae を用いた。実験感染は、約10の5~6乗CFU/mlの濃度の両株海水懸濁液にブリを10分間浸漬して行った。その後26~29日間にわたり、経時的に感染魚を3尾ずつ取り上げて各臓器と末梢血を採取し、DNA抽出後に16SrRNA遺伝子を標的にしたSYBR GreenによるリアルタイムPCR法に供した。死亡魚についても同様に行った。 その結果、N-2927株感染魚では、感染7日後から死亡魚が見られ、13日後には死亡率が100%となった。N-2927株の16SrRNA遺伝子のコピー数は、感染3日後から腎臓と脾臓、感染6日後から胃、感染7日後から肝臓、心臓、腸管および鰓でU-1株の遺伝子コピー数よりも有意に高い値となり、感染7日後にすべての臓器で死亡魚の値と同程度に達した。U-1株感染魚では死亡魚は見られなかったものの、菌の遺伝子が長期間にわたり確認された。 本菌は感染後の体内における菌増殖期間が長く、また感染魚の死亡率にも個体差が生まれやすいために、免疫等による効果の判定が困難とされるが、本法の使用により短期間かつ感染過程を反映しながらGAPDHの免疫効果の判定を行うことができる見通しがついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験魚飼育施設の給水ポンプ系の予期せぬ故障により、予定の魚類飼育実験を平成23年度に繰り越して実施した。しかし、平成24年度に繰り越した平成23年度分の実験と、平成24年度分として当初から計画していた実験とを併行して施設(飼育水槽)を使用せざるを得なかったため、計画していた魚類飼育実験すべてを完了できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度から平成24年度に繰り越して実施する実験のうち、未消化の実験(GAPDHのアジュバントとしての効果)は、平成25年度に実施する。平成25年度には実験量が増えることになるが、本年度開発できた感染微生物の遺伝子量の推移を測定する方法が活用できることになったため、効果を図るための飼育実験を伴った攻撃実験の期間を大幅に縮小しながら、目的の成果を得ることが可能である。
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