2011 Fiscal Year Annual Research Report
魚類腸管機能に対する内因性・外因性レクチンの調節作用とその応用
Project/Area Number |
23380121
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村本 光二 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90157800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 智久 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (80240901)
永沼 孝子 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50250733)
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Keywords | レクチン / 腸管輸送 / 蛍光 / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
内因性レクチンと,植物性飼料原料等に含まれる外因性のレクチンが魚類腸管機能に及ぼす作用を,モデル実験動物であるゼブラフィッシュを使って明らかにすること,さらにレクチンがもつ調節作用を応用して抗酸化剤や免疫賦活剤の養殖魚腸管からの吸収効率を高め,抗病性の向上に資することを本研究の目的にしている。 ゼブラフィッシュの卵巣からラムノース結合特異性レクチン(RBL)を複数単離し,生化学的性状を明らかにした。RBL群に対する特異抗体を用いてゼブラフィッシュにおける局在を分析した。また,内因性レクチンの分子機構を調べるために,RBLの糖鎖認識ドメイン(CRD)のリコンビナント発現系を構築した。 餌料に添加したレクチン(大豆,ナタマメ,小麦胚芽由来)を長期に投与しても成長や腸管上皮組織には影響はなく,また,投与したレクチンは消化器官に活性を保持したまま到達することを確認した。輸送経路既知の3種の蛍光マーカーを使い腸管からの取り込みを蛍光HPLCと蛍光顕微鏡により解析した。ゼブラフィッシュ稚魚ではいずれの蛍光マーカーでも投与後3時間から腸管から体内への移行が観察され,24時間後には肝臓への集積が認められた。成魚では,尾部静脈から採取した血液中の蛍光マーカーの動態をHPLCで分析し,レクチンの投与によって,カルボン酸輸送経路とP糖タンパク質介在経路に関係する輸送量が増加することを明らかにした。摂餌量を,蛍光マーカーをコーティングしたミクロビーズを用いて測定する方法を開発した。すなわち腸管輸送の追跡に用いた蛍光マーカーとは異なる蛍光特性とHPLC挙動を示す蛍光マーカーをミクロビーズに導入し,これを添加した餌料を試験魚に投与後,一定時間後に腸管からミクロビーズを回収,回収蛍光マーカー量から摂餌量を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,ゼブラフィッシュを用いて,外因性レクチンが腸管上皮における透過・輸送に与える影響とその機構を解析するとともに,遺伝子レベルでは存在が確認されている内因性レクチンを単離して生化学的性状を調べ,それらの局在と免疫応答性を明らかにすることを目指した。ゼブラフィッシュはモデル動物として,発生・分化,形態形成などの広範な研究分野で用いられているが,本研究が目的とする腸管機能の解析はほとんど行われていない。そのため稚魚の透明性を活用した蛍光顕微鏡観察は順調に進めることができたが,成魚の臓器と血液を使用する実験では,対象が微小・微量であるため,従来の手法の改良に時間を要した。また,腸管輸送量の測定は,個体ごとの摂餌量の情報が必要であることから,新規の方法を開発しなければならず,目的の達成に当初の計画より多くの時間がかかったが,本法は今後の研究の遂行に活用が大いに期待できる。また,内因性のレクチンを卵巣から単離したが,試料が少量であることに加え,複数のレクチンが存在していることが明らかになり,個々のレクチン精製に計画よりも時間を要した。 以上の理由から研究の進捗はやや遅れているが,すでに作成済みの他の魚種のレクチン群に対する抗体との反応性がゼブラフィッシュ・レクチンでみられ,今後の局在性や免疫応答性の研究を早めることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度単離した内因性レクチンの構造を解析する。腸管に対する外因性レクチンの調節機能の機構として,レクチンとの直接的な相互作用により上皮細胞機能が変化する場合と,透過・輸送に関る上皮細胞タンパク質の発現調節によって機能が変化する場合が考えられる。先ず,後者の機構を検討するために,レクチン処理による腸管上皮のタンパク質発現パターンをプロテオームとDNAマイクロアレイを用いて解析する。外因性レクチンによる遺伝子発現を網羅的にDNAマイクロアレイ解析することにより,透過・輸送に関る輸送タンパク質やタイトジャンクション構成タンパク質等だけでなく,消化酵素群や免疫・内分泌等に関係するタンパク質の発現変動と,それらが関る機能に対するレクチンの調節作用に関する情報を得ることも期待できる。 前項で述べた腸管上皮細胞に対するレクチンの直接的な相互作用を明らかにするために,レセプターの同定を行う。内因性・外因性レクチンをゲル担体に固定化して作成したレクチン・カラムを使用して,腸管上皮抽出物から各レクチンと相互作用する分子を単離し,プロテオーム解析の手法を準用して同定する。糖鎖の解析はレクチンアレイで行う。前項の結果と合わせて,腸管機能におけるレクチンの調節機構を考察する。 前年度の研究で腸管透過・輸送に顕著な影響がみられた外因性レクチンについて,蛍光プローブを投与する量と期間を変えてさらに詳しく透過・輸送に対する影響を調べる。配合飼料に抗酸化剤を加え,生体に取り込まれる量に対するレクチンの影響を蛍光HPLCとLC-MSで分析する。
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Research Products
(11 results)