2012 Fiscal Year Annual Research Report
魚類腸管機能に対する内因性・外因性レクチンの調節作用とその応用
Project/Area Number |
23380121
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村本 光二 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90157800)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永沼 孝子 東北大学, 生命科学研究科, 助教(Research Associate) (50250733)
小川 智久 東北大学, 生命科学研究科, 准教授(Associate Professor) (80240901)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | レクチン / ゼブラフィッシュ / 腸管機能 / 抗酸化 / 魚類レクチン / 酸化ストレス / 腸管吸収 / ラムノース |
Research Abstract |
本研究では,魚類体内の内因性レクチンと植物性飼料原料等に含まれる外因性レクチンが魚類腸管機能に及ぼす作用を,モデル実験動物であるゼブラフィッシュを使って明らかにすることを目的にした。ゼブラフィッシュ未受精卵から単離した複数のラムノース結合特異性レクチン(RBL)の構造解析を行い,主要なDRL1とDRL2が3量体,DRL3は2量体であることを明らかにした。DRL1とDRL2は,215アミノ酸残基からなるシロサケRBLであるCSL3様構造をもち,DRL3はウニ卵レクチンSUELに高い相同性を示した。ゼブラフィッシュ腸管において外因性レクチンは高い安定性と腸管上皮粘膜抽出物に対する結合活性を示した。ゼブラフィッシュにレクチンを添加した餌料を与えた後,腸管タンパク質を2次元電気泳動で分析し,レクチン処理で発現したタンパク質を同定した。抗酸化性ジペプチドを添加した餌料をゼブラフィッシュに投与し,血液と肝臓における酸化ストレスマーカーであるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性,及び還元型/酸化型グルタチオン比を測定した。カルノシンの投与により血液中のSOD活性は上昇したが,レクチンの同時投与によるSOD活性への影響はみられなかった。還元型/酸化型グルタチオン比においても,カルノシン投与により還元型グルタチオン値が上昇した。イソフラボン配糖体をグリコシダーゼ処理によってアグリコンに変換後,ゼブラフィッシュに投与し,腸管から吸収されたイソフラボンは体内で抱合体化されることを明らかにした。ゼブラフィッシュをパラコート(PQ)存在下で飼育し,各臓器(血液、肝臓、エラ、腸管)を採取,DPPP法により過酸化脂質量を蛍光測定した。PQによる酸化ストレスによって,ゼブラフィッシュのすべての臓器で過酸化脂質量が増加しており,抗酸化ストレスの評価系としての応用性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゼブラフィッシュ未受精卵には複数の内因性レクチンが存在しており,前年度に単離精製に時間を要した。そのため,今年度はこれらの構造解析に傾注したため,機能評価に若干の遅れがみられた。また,ゼブラフィッシュ腸管における抗酸化物質の透過・輸送に対するレクチンの影響評価に関しては,これまで,類似の研究がほとんどなく,採取可能な極少量の血液や内臓試料に対応した分析方法をその都度設定してから評価しなければならず,計画以上の時間を要した。イソフラボンではアグリコンを分析対象にすることにより,通常のHPLC装置を用いて分析が可能になったが,酸化ストレスマーカーでは本実験系に適したものを選択するために時間を要した。
|
Strategy for Future Research Activity |
抗酸化剤や免疫賦活剤には分子量や溶解性(親水性・親油性)が異なる多様なものがあり,個々の分子の腸管透過・輸送に対する外因性レクチンの影響を把握するために,イソフラボンとポリフェノールの配糖体,及びそれらの糖鎖を除去したアグリコン,抗酸化ビタミン,免疫賦活剤としてベータ・グルカンの透過・輸送を蛍光HPLC・HPLC-質量分析計で分析する。過酸化脂質を含む配合飼料に,レクチン及び抗酸化剤を添加したものをゼブラフィッシュに与え,血液の全抗酸化ストレス能をORAC法とABTSラジカル消去活性を用いて調べる。また,肝臓中の抗酸化ストレス関連酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)とグルタチオンペルオキシダーゼの活性を酵素リサイクリング法で,血液中の酸化ストレスマーカーを酵素免疫法で,還元型・酸化型グルタチオン量を測定する。免疫賦活能は,血球細胞における酸素バーストで生じる化学発光により分析する。ゼブラフィッシュの抗酸化ストレスと抗病性の向上に関わる因子としては,抗酸化剤と免疫賦活剤,及び植物性原料由来のレクチンを対象にする方針である。
|
Research Products
(9 results)