Research Abstract |
本研究は,衛星情報と空間情報を属地データとして活用し,属人データかつ全数調査であるセンサス小地域統計と統合し,また,農業経営調査によって実態的な検証を行うことにより,中山間地域を対象として,小地域別の作付面積,労働投入,農業の担い手の在り方,産出量,粗生産額といった地域全体の将来像を描き出すことを目的としている。初年度の2011年度は,1)小地域統計部門では,i)農業センサス集落カードを用いたランダム係数回帰モデルにより,経営規模と年齢別の農業労働投下量を推計した。その結果,水稲作での小規模高齢農家の労働投入が大きく,そのうち7割程度については若い担い手の規模拡大によって代替可能であることが示された。ii)また,中山間地域等直接支払い(第3期)の協定動向についてデータ収集を行った。2)衛星空間情報部門では,i)対象地域の圃場情報,耕作者情報約5万件を入手し,GISによりデータベースの統合を行った。ii)経営別の圃場区画,通作距離の解析を行い,水田経営の規模拡大にともない,両者が収束していく傾向を把握した。iii)分解能30mの衛星データに対してパンシャープン処理を施して15mに補正し,作付の有無を判別する解析を試行した。iv)また,傾斜地におけるオーバーレイ解析により,景観資源として優れた棚田を抽出した。3)農業経営調査部門では,i)大規模な集落営農と個別経営の主体別の規模拡大と農地集積の条件について析出し,集落営農では,比較的農地集積において障害が少ないのに対して,個別経営では様々な農地集積戦略を試みている実態が示された。ii)また傾斜地における聞き取り調査から,3~6haの個別経営や集落営農,公社による耕作が行われている実態が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,空間情報,衛星情報,統計情報といった対象地域に関わる膨大なデータの入手だけでなく,解析も進みつあり,一部は研究論文として公表された。また,小地域統計と衛星空間情報をベースにした農業経営調査は,比較的平坦な十日町・川西地区と,急傾斜である松代・松之山地区においてそれぞれ実施され,前者については3月の学会にて口頭報告を行い,後者についても次年度半ばに報告予定である。本研究は,共通の対象地域を「越後妻有地域」に定め,その地域との連携を重視しているが,今年度5月にはキックオフ研究会を,2月には初年度の研究成果報告会を,いずれも現地にて実施し,研究成果の共有と意見交換を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,比較的平坦な十日町・川西地区と,急傾斜である松代・松之山地区において,それぞれ小地域統計,衛星・空間情報,農業経営統計調査による分析を進め,地域の将来像を描き出すことを試みる。具体的には,i)衛星情報のさらなる解析と,衛星情報と空間情報を用いた小地域統計の分析の着手,ii)農業経営の規模拡大と農地集積におけるコストと収益,販売戦略,経営管理との関連性の検討,iii)傾斜地における農地保全の主体別(所有者,耕作者,地域外住民など)の役割の把握,iv)中山間地域等直接支払い等の政策による影響の把握,v)以上を統合した地域農業計画の理論構築への着手について実施する。以上の研究過程においては,現地研究会の実施を通じて,地域の実態やニーズとのすり合わせを行いつつ進める。
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