2011 Fiscal Year Annual Research Report
低メタン産生牛の特定をめざしたルーメン菌叢プロファイリング指標の確立
Project/Area Number |
23380156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 泰男 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (50153648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 聡 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (90431353)
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Keywords | メタン低減 / 地球温暖化 / ルーメン / 菌叢 / 個体差 |
Research Abstract |
本研究では、メタン低減剤への反応が大きいウシとそうでないウシのルーメン菌叢を網羅的に比較し、「低メタン生成を導く菌叢特定(ウシ選抜)の指標を開発する」ことを目的としている。新規メタン低減剤であるカシュー殻液製剤に対するメタン低減反応の異なるウシ3頭からルーメン内容物を採取し、菌叢解析を実施した上で、メタン低減率が大きいウシの特徴づけを試みた。 まず個体ごとのルーメン内容物を用いて16S rRNAおよびメチルコエンザイムAの遺伝子ライブラリー(ルーメン内潜在菌数を反映)およびそれらのcDNAライブラリー(ルーメン内の活性を反映)を構築した。低減剤給与前後の個体別ライブラリーからのべ2154クローンの塩基配列決定し、真正細菌およびメタン生成古細菌構成員を網羅的に解析した。 これらの解析を通して、低減剤給与前に比べ給与後に増減した菌群の特定を試みたところ、以下のような結果を得た。すなわち、真正細菌ではSuccinivibrio dextrinosolvensに系統的に近い菌群の検出頻度上昇があり、古細菌では未培養のメタン菌のそれが下がっていた。この増減はとくにメタン低減率の高いウシ個体で顕著であった。前者はプロピオン酸の生成にかかわる菌種に近いことから、メタン低減率大なウシのルーメン内でプロピオン酸生成系が優先的に増強されたことを示唆するものである。今後はこれらの現象を精密定量化するためのPCRプライマーや、視覚化のための蛍光プローブの設計が必須と思われる。このように初年度で菌叢特定の一定の手がかりが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシ個体別の菌叢ライブラリーが構築でき、かつ網羅的な配列解析が推進できている。その中で、特徴的な増減を示す菌群がいくつか特定できたことは当初の予想どおりである。ただし、個体数が3頭と、少なかったのが残念なところではある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に特定したメタン低減とともに大きな増減を示す菌群の精密定量化が必須である。そのためのツールとしてreal-time PCRによる定量系の確立と活用が望まれ、これを通して初年度の探索的な解析が花開くことになる。同時に、メタン低減剤の給与試験をより多くの動物で実施し、これら菌群動態の普遍性を検証しつつ、研究を推進していく必要を感じている。
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