2012 Fiscal Year Annual Research Report
低メタン産生牛の特定をめざしたルーメン菌叢プロファイリング指標の確立
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23380156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 泰男 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50153648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 聡 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90431353)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | メタン低減 / 地球温暖化 / ルーメン / 菌叢 / 個体差 |
Research Abstract |
反芻家畜が生成する温暖化ガス、メタンの削減をはかるため、新規メタン低減剤の開発を行なってきたが、その過程で「メタン低減率にはウシの個体差が大きい」ことを見出した。メタン低減にはルーメン内の特定菌の増減が関与しており、結果的に菌叢の大きな変化が必須である。ウシが元来有している菌叢および低減剤への菌叢の反応に個体差があるため、メタン低減率にこのような違いが生じるものと理解される。しかし、これを逆手に取り、低減剤への反応が大きい固有菌叢を特定できれば、メタン低減率の大きいウシを事前に選抜可能である。そのようなウシの特定には、複雑なルーメン菌叢をプロファイリングできる指標が必須である。本研究では、メタン低減剤への反応が大きいウシとそうでないウシのルーメン菌叢を網羅的に比較し、「低メタン生成を導く菌叢特定(ウシ選抜)の指標を開発する」ことを目的とする。 本研究課題の2年目までの分析で、ウシルーメンにおけるメタン低減の大小とリンクする主要菌群2つ(真正細菌群OTU95ならびにメタン生成古細菌群mOTU35)を特定できた。しかも、両菌群ともDNA定量系を確立でき、精密な動態追跡が可能となった。これを駆使することにより、両菌群がウシのべ6頭のメタン低減に密接に関係していることをつきとめた。また、おそらくOTU95は低減反応大のウシのみが優先的に保有する菌群であること、一方mOTU35はいずれのウシも保有するものの、メタン低減大のウシで本菌群の減少程度が大きいものと推定された(メタン低減率と高い相関をもつ菌群であると判断された)。つまり、いずれの菌群もメタン低減程度の個体差を説明するに足る指標と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシ個体別のルーメン菌叢の網羅的解析をとおして、メタン低減率の大きな個体でより大きく変動する菌群を2つ特定でき、さらにそれらの定量系を確立できた。これを活用することで、両菌群のメタン低減剤に対する反応を鋭敏かつ定量的にとらえることができるようになった。すなわち、真正細菌群OTU95とメタン古細菌群mOTU35をメタン低減度を判別する指標として使う目処がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、より多数の候補菌群を特定し網羅的指標を確立するよりも、むしろ2年目までに特定した2つの菌群動態の普遍性を実証するほうが、研究成果の信頼性を高め、今後の応用にも資すると判断し、以下のような検討を実施するものとする。 ルーメン菌叢は元来個体差が大きく、品種間差や動物種間差もからんでくることで、本課題で特定したメタン生成とリンクする菌群の増減に関しては「普遍性の検証」が重要である。そこで、日本国内のウシの代表品種であるホルスタイン種に加え、最もメタン放出が大な地域のひとつである東南アジアの在来牛および水牛も評価材料に加える。さらにヒツジも評価材料とする。これら多頭数の反芻家畜で、かつ代表的な品種や畜種をカバーしながら、特定菌の動向に法則性があることを実証する。多数の試料を扱いながら、特定の細菌遺伝子情報を整理・体系化していくのが最終年度の主作業である。 一方で、2つの菌群ともに培養分離化した菌株がないため、分離に向けての集積方法の検討を実施する。集積効率の評価にも上記の精密定量系が威力を発揮するのは言うまでもない。以上の検討を踏まえ、メタン低減大の個体を保有菌叢情報から事前推定する当初の目的に近づくものとする。
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Research Products
(12 results)