2012 Fiscal Year Annual Research Report
国際標準SNPシステムの構築に基づくアジア在来家畜集団の遺伝的多様性解析と保全策
Project/Area Number |
23380165
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
万年 英之 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20263395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹崎 晋史 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50457115)
西堀 正英 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (80237718)
下桐 猛 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (40315403)
本多 健 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10432551)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ゲノム / 在来家畜 / 多様性 / SNP |
Research Abstract |
これまでにウシ、ブタ、ニワトリに対する国際的な遺伝的多様性分析に適するSNPを約300選出した。これらのSNPは遺伝子頻度が0.1~0.5であり、連鎖がないSNP候補であった。これらの候補からDigiTag2法で効率よく検出でき不適切SNPを除外した結果、ウシ、ブタ、ニワトリともに96 SNPによる基本システムの構築に成功した。 ウシは特に重要家畜種であり、閉鎖集団であり近交度の高い我国の黒毛和種に対しても十分な遺伝的多様性の情報が得られるようセカンドシステムの構築も試みた。上記候補96SNPに加え、これらSNPと連鎖の少ないSNPを選出した。DigiTag2法による遺伝子型判定の結果、最終的に128SNPが有用なSNPであることが明らかとなった。平均マーカー間距離25.45Mbp、最小マーカー間距離9.29Mbpであった。この多様性評価用SNPマーカーパネルの有効度を検証するためにBos taurus、Bos indicus各24個体に対して遺伝子型判定を行い、各SNPの遺伝子型頻度及び遺伝子頻度、マイナーアリル頻度(MAF)を算出した。128SNPのMAFの範囲は0.010~0.500であり、そのうち70 SNPが0.300以上のMAFを有していた。 ウシについては、重要形質に関連するSNPの選出を行いシステムへの導入が可能か検討した。特に牛における不良形質に着目し、Spherocytosis、Chediak-Higashi syndrome、renal tubular dysplasia、Factor XIII deficiency、Xanthinuria、multiple ocular defects、coat color variationである。これら多型をDigiTag2法システムに導入したところ、正常個体と保因個体の識別が明瞭に区分可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りウシ、ブタ、ニワトリのすべての家畜種に対して国際的な遺伝的多様性分析に資する96 SNPによる基本システムの構築に成功している。これらの各SNPは概ね遺伝子頻度が0.1~0.5であり、かつ連鎖がないSNPであることから遺伝的多様性解析に有用なSNPであることも明らかにしている。 これに加え、ウシでは遺伝的多様性が低いと思われる我国の黒毛和種に対しても十分な遺伝情報が得られるようにセカンドシステムの構築も試みている。その結果、192SNPに対して検討を行い、最終的に128SNPが有用なSNPであることも明らかにしている。この2つのSNPシステムを用いてBos taurusおよびBos indicusに対する遺伝子型判定も行い、有効なSNPを検討するとともに、各SNPの遺伝情報を構築し一連の遺伝的類縁関係などの解析なども行っている。 これらの結果に加え、ウシでは重要形質に関連するSNP多型のシステムへの導入も検討した。特にウシの不良形質7遺伝子に着目して検討したところ、これらの遺伝子型判定が本システム上で十分機能することを明らかにした。 このように計画に沿って研究は滞りなく進捗しており、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに、国際的な遺伝的多様性分析に適するウシ、ブタ、ニワトリのSNP選出に成功した。これらのSNPは遺伝子頻度が0.1~0.5であり、連鎖がない(>10Mbp)SNP候補を選出した。これらSNPによるウシ、ブタ、ニワトリの国際標準SNPシステムの基盤は構築した。 平成25年度は、構築したSNPシステムを用いた遺伝的多様性解析を進める。さらに、構築が完成したウシ、ブタ、ニワトリのSNPシステムを用いて実際のアジア在来牛集団に対するSNP解析を試みる。ウシ、ブタ、ニワトリのそれぞれに対し、様々な国や地域のアジア在来家畜のDNA試料に対しDigiTag2法によるSNP解析を行う。 得たSNP情報を用い、各家畜種内の類縁関係や遺伝的構造を明らかにする。そのために各種の集団遺伝解析や系統樹解析、Structureによる遺伝的構造解析を実施する。これらの分析により、地域集団間の類縁関係や集団内での多様性、集団間でのゲノム交雑度を推定する。また、家畜の重要形質SNP分析から得られた各SNPの遺伝子頻度から、地域ごとの形質、疾病・抵抗性などにどのような傾向があるのかを探る。 各アジア在来家畜から得られたSNP情報をもとに、集団から失われつつある染色体領域や希少系統を探る。この解析では、SNP情報から各集団における期待ヘテロ接合度指数や集団間の遺伝距離指数を算出することで希少系統や希少染色体領域の検出を行う。さらに、DNA試料に記録されている各個体の形態測定値(亜種、毛色、体測定値など)も考慮に入れ、各地域・系統の重要性を示すことで、アジア在来家畜の多様性維持のための保全策を提唱する。
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Research Products
(7 results)