2011 Fiscal Year Annual Research Report
和牛の遺伝的改良を目的とした血液凝固第XI因子欠乏症の生産性に与える影響の解明
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23380166
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
国枝 哲夫 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80178011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 岳人 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (90314682)
揖斐 隆之 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (70335305)
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Keywords | 遺伝性疾患 / 黒毛和種 / 繁殖性 / 遺伝子診断 / 血液凝固異常 / 流死産 |
Research Abstract |
血液凝固第XI因子欠乏症は黒毛和種に見られる出血性の遺伝性疾患である。本疾患の出血傾向自体は軽微であるが、異常産や繁殖障害の原因となっている可能性も示唆されている。一方、本疾患の遺伝子頻度はきわめて高く、全個体の10%近くが本疾患を呈していると推測されている。したがって、もし本疾患が生産性に何らかの影響を与えるなら、その経済的損失は多大である。そこで本研究では、第XI因子欠乏症と異常産や繁殖障害との関連について大規模な調査を行うとともに、発症牛を用いた卵巣機能等の生理学的解析等を行うことで本疾患が和牛の生産性に与える影響を総合的に明らかとすることを目的とする。本年度は以下の研究を行い所定の成果を得た。 全国の畜産、獣医関係機関の協力により、流死産等の異常産や繁殖異常のサンプルを大規模に収集し、これらの形質とF11遺伝子の遺伝子型との関連についての解析を行った。その結果、F11ホモ個体では、流産、死産等の異常産の発生頻度が正常個体に比べて有意に高いことが明らかとなった。これらの結果より、第XI因子の欠損が、実際に異常産や繁殖異常に関与している可能性が強く示唆された。また、連続して新生仔を繰り返した繁殖牛を調べたところ、母牛、仔牛がともにF11遺伝子の変異型のホモであることが明らかになり、母牛と仔牛が同時に変異型のホモである場合に新生仔死を高頻度で引き起こす可能性が示唆された。 以上のことから、黒毛和種の血液凝固第XI因子欠乏症は繁殖性に好ましくない影響を与えるものと考えられ、今後黒毛和種の育種では排除の対象とするべきであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では下記の課題に取り組むことを計画した。 1.異常産、繁殖異常個体の大規模サンプリング2.F11遺伝子型簡易検出法の確立3.F11遺伝子型のスクリーニングと解析4.第XI因子欠乏症発症個体の同定と導入5.ノックアウトマウスを用いた第XI因子が個体発生に与える影響の解明 上記のうち、5以外については予定通りに研究計画が実施され、所定の成果が達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究計画を継続し、より多くの異常産、繁殖異常個体の大規模サンプリングを行い、F11遺伝子型のスクリーニングと異常産等との関連について解析を行う。また、新たに各地域の屠場より、多数の肥育牛の枝肉のサンプルを採取し、同時にそれらの肥育牛の枝肉情報も収集する。これらのサンプルについても、F11の遺伝子型のタイピングを行い、各種枝肉形質とF11遺伝子型との関連を統計遺伝学的に明らかにする。特定の枝肉形質とF11遺伝子型との有意な関連が認められた場合には、その経済的影響を数値化し、F11変異遺伝子が和牛生産に与える影響を総合的に評価する。
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