2012 Fiscal Year Annual Research Report
和牛の遺伝的改良を目的とした血液凝固第XI因子欠乏症の生産性に与える影響の解明
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23380166
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
国枝 哲夫 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80178011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揖斐 隆之 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70335305)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 育種 / 遺伝 / 血液凝固 / 黒毛和種 |
Research Abstract |
前年度の研究により、血液凝固第XI因子欠乏症個体では流産等の発生頻度が高い可能性を示す結果が得られたことから、本年度は下記の2課題について、血液凝固第XI因子欠乏症と家畜生産性の関係を明らかにすることを試みた。 1.全国の各地域の黒毛和種に発生した新生仔死亡等について、新生仔およびその母親の血液を採取し、F11の遺伝子型のタイピングを行った。得られたF11の遺伝子型により、これらの形質とF11遺伝子型との関連について調べ、その遺伝子頻度を正常個体の遺伝子頻度と比較した。その結果、死亡個体およびその母親のF11遺伝子の遺伝子頻度と、正常個体の遺伝子頻度の間に有意な差は認められず、したがって、血液凝固第XI因子欠乏症と新生仔死の間には顕著な関連はないことが推測された。 2.全国各地域の地域集団より、肥育牛のサンプルと枝肉情報を収集した。特に血液凝固異常が屠殺時に筋肉内微少出血を引き起こしている可能性も指摘されていることから、筋肉内出血を呈している個体のサンプリングも行った。これらのサンプルについて、F11の遺伝子型のタイピングを行い、遺伝子頻度を算出するとともに、枝肉重量、ロース芯面積、皮下脂肪厚、マーブリングスコアなどの各種枝肉形質、さらに筋肉内出血とF11遺伝子型との関連を調べた。その結果、F11の遺伝子頻度は地域集団によって大きく異なっていることが明らかとなった。また、これらの集団では、F11の遺伝子型はいずれの枝肉形質とも有意な関連は認められず、血液凝固第XI因子欠乏症は黒毛和種の枝肉形質に顕著な影響を与えないことが明らかとなった。この結果は、血液凝固第XI因子欠乏症の発症を予防するためにF11遺伝子を指標とした選抜を行っても、枝肉形質には影響を与えないことを示すものであり、今後の血液凝固第XI因子欠乏症の発生を予防するための選抜育種にとって重要な知見であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は以下の二つの課題を当初の研究実施計画において設定している。 1.異常産について、新生仔およびその母親の血液を採取する。得られたサンプルについて、F11の遺伝子型のタイピングを行う。得られたF11の遺伝子型と、異常産、繁殖障害のデータを用いた統計遺伝学的な解析により、これらの形質とF11遺伝子型との関連を明らかにする。その結果、有意な関連が認められた場合には、F11変異遺伝子より生じる異常産、繁殖障害による和牛生産への経済的影響を推定する。 2.各地域より、肥育牛の枝肉のサンプルと枝肉情報も収集する。特に血液凝固異常が屠殺時に筋肉内の微少出血を引き起こしている可能性も指摘されていることから、ランダムにサンプルを収集するとともに、筋肉内出血を呈している個体を特定したサンプリングも行う。これらのサンプルについて、F11の遺伝子型のタイピングを行い、枝肉重量、ロース芯面積、皮下脂肪厚、マーブリングスコアなどの各種枝肉形質、さらに筋肉内出血等の形質とF11遺伝子型との関連を明らかにする。もし、特定の枝肉形質とF11遺伝子型との有意な関連が認められた場合には、F11変異遺伝子が和牛生産に与える影響を評価する。 本年度研究では、上記の課題を研究計画に従って実施した結果、死亡個体およびその母親のF11遺伝子の遺伝子頻度と、正常個体の遺伝子頻度の間に有意な差は認められず、したがって、血液凝固第XI因子欠乏症と新生仔死の間には顕著な関連はないこと、F11の遺伝子頻度は地域集団によって大きく異なるが、F11の遺伝子型はいずれの枝肉形質とも有意な関連は認められず、血液凝固第XI因子欠乏症は黒毛和種の枝肉形質に顕著な影響を与えないことが明らかとしている。したがって、研究計画に沿っておおむね順調進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度、24年度の研究の実施により、血液凝固第XI因子欠乏症発症個体では、流産、死産等の異常産の発生頻度が正常個体に比べて有意に高いが、その差は顕著ではないこと、血液凝固第XI因子欠乏症は新生仔の死亡には大きな影響を与えないこと、血液凝固第XI因子欠乏症は肥育牛の枝肉形質に顕著な影響を与えないことが明らかとされた。一方、黒毛和種の繁殖牛のスクリーニング調査の結果、F11遺伝子が正常であっても、新生仔に血液凝固時間の顕著な延長がみられる個体が存在すること、これらの血液凝固異常が、流産、死産、新生仔死等の繁殖異常に関わっている可能性が示唆された。 そこで、今後の研究の推進方策としては以下の2点を予定している。 1.平成23年度、24年度に引き続き、黒毛和種の全国の繁殖牛、肥育牛のサンプルについて、F11遺伝子のタイピングを行い、繁殖異常、枝肉成績などの形質と比較することで、血液凝固第XI因子欠乏症が、軽微であってもこれらの形質に関与し、黒毛和種の生産性に影響を与えてるか否かを明らかとする。 2.血液凝固第XI因子欠乏症以外の血液凝固異常が黒毛和種の集団中に存在し、それらが黒毛和種の生産性に影響を与えている可能性を明らかとするために、F11遺伝子が正常であるあるにもかかわらず、血液凝固時間が延長した個体およびその家系について,血液凝固因子の遺伝子における変異を含めて、どのような原因により血液凝固異常が生じているかを明らかにする。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Genetic Variability of Maternal Effect on Body Measurements and its Intra- and Inter- Genetic Relationship with Direct Effect in Japanese Black Calves,2012
Author(s)
Munim, T., Oikawa, T., Ibi, T., Kunieda, T., Hoque, MA.
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Journal Title
Anim. Sci. J.
Volume: 83
Pages: 199-206
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Skeletal Analysis of the Long Bone Abnormality (lbab/lbab) Mouse, A Novel Chondrodysplastic C-Type Natriuretic Peptide Mutant.2012
Author(s)
Kondo E, Yasoda A, Tsuji T, Fujii T, Miura M, Kanamoto N, Tamura N, Arai H, Kunieda T, Nakao K
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Journal Title
Calcif Tissue Int
Volume: 90
Pages: 307-318.
DOI
Peer Reviewed
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