2012 Fiscal Year Annual Research Report
増殖欠損ウイルスを応用した次世代・狂犬病ワクチンの開発
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23380179
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
杉山 誠 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (80196774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 直人 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20334922)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 狂犬病ウイルス / ワクチン / 増殖欠損ウイルス / 弱毒化変異 |
Research Abstract |
本年度は、M遺伝子欠損ウイルスの増殖用細胞として、M蛋白質恒常発現Vero細胞を樹立した。本細胞株を用いてM遺伝子欠損ウイルスの増殖性を検討したところ、得られたウイルス力価は最大で2.1×102 FFU/mlを示し、その増殖能は親株のERA株(4.5×108 FFU/ml)よりも著しく低いことが分かった。培養細胞におけるウイルスの増殖能はワクチンの生産コストにかかわるため、増殖能の著しく低いM遺伝子欠損ウイルスをワクチンに応用することは困難であると考えられた。 そこで、当初の計画を変更し、高い増殖能を持つERA株に、既知の弱毒化変異を複数導入した安全性の高い生ワクチン株を樹立した。すなわち、G遺伝子に加え、N遺伝子上に弱毒化変異を導入したERA-NG株を作製した。本株は、培養細胞における高い増殖性を示し、かつG遺伝子上の変異のみにより弱毒化している株よりも高い安全性を有していた。また、ERA-NG株をマウスへ筋肉内接種することで、狂犬病ウイルスに対する感染防御効果を賦与できることが分かった。以上のように、ERA-NG株が安全性の高い弱毒生ワクチン株となる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画から大幅な変更があったものの、当初予想していなかった研究成果も多く上がっている。具体的には、NおよびG遺伝子上の複数の変異により弱毒化した狂犬病生ワクチン株(ERA-NG株)の樹立や、遺伝子欠損・混合型狂犬病生ワクチンといった新しいワクチン株の開発である。 狂犬病ウイルスの弱毒化変異に関する情報が少ない現状において、N遺伝子上の新たな弱毒化変異の情報を提供することができた。NおよびG遺伝子上の複数の変異により弱毒化された狂犬病生ワクチン株の樹立は世界初である(特許出願中)。また、遺伝子欠損・混合型ワクチンの弱毒化コンセプトは、狂犬病ウイルスのみに留まらず、他のモノネガウイルスにも幅広く応用できる可能性を秘めている(特許出願中)。 いずれの成果も、狂犬病ワクチンの開発に大きな貢献をすることが期待でき、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、本年度において作製した遺伝子欠損・混合型生ワクチンに弱毒化変異を導入して、より安全性の高い生ワクチン株の樹立を行う。遺伝子欠損・混合型生ワクチン株は弱毒性状を有している一方、本ワクチン株に含まれる2種類の遺伝子欠損株が相同組換えを起こし、欠損遺伝子を獲得した病原性復帰株が出現する可能性を否定できない。狂犬病ウイルスにおいて、相同組み換えは非常に稀な現象であることが知られているものの、本ワクチン株にさらにNおよびG遺伝子上の弱毒化変異を導入することで、たとえ相同組換えが起こったとしても弱毒性状が保たれる新型ワクチン株を開発する。また、新型ワクチン株の培養細胞における増殖性の検討並びに、マウスを用いた安全性および免疫原性の評価を行う。さらに、これまで開発した生ワクチン候補株を、実際にイヌに接種し、安全性と免疫原性の評価を行う。イヌに対する接種方法としては、注射器を用いた筋肉内接種に加え、経口投与および経鼻投与を実施し、ベイト・ワクチンおよび噴霧型・ワクチンとしての有効性を検討する。
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Research Products
(5 results)