2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミエリン変異ラットを用いたミエリン修復・再生ダイナミックスの解明と治療戦略の構築
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23380180
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20244668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山手 丈至 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50150115)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脱髄 / ミエリン / オリゴデンドロサイト / ミトコンドリア / 多発性硬化症 / モデル動物 / 再生 |
Research Abstract |
これまで、中枢神経系の白質におけるミエリン崩壊を特徴とする自然発症ミュータントdemyelination (dmy) ラットの病態解析を行ってきた。dmyラットの原因遺伝子は、ミトコンドリア内のマグネシム流入に関与するMrs2遺伝子であるが、MRS2は主に中枢神経系の神経細胞に分布しており、神経細胞のミトコンドリア異常がどのようにミエリン形成細胞のオリゴデンドロサイトを障害し、ミエリン崩壊に至るかについては不明な点が多い。今回、dmyラットの病理発生を明らかにする目的で、特に神経細胞の病態に注目して解析した。 6、7、8週齢のdmyラットのホモ型および対照ラット(野生型)の脊髄を腹索・灰白質・背索にわけて採材し、①Real-time PCR 法により、各部位におけるオリゴデンドロサイトの分化に関わる転写因子のmRNA発現量を測定した。②抗ミトコンドリアCOXIV抗体を用いた免疫組織化学解析により、神経細胞におけるミトコンドリアの変化を比較した。③抗Golgi抗体、抗ユビキチン抗体を用いた免疫組織化学解析と、PLPに対するin situ hybridization法によって、腹索のオリゴデンドロサイトの染色性を比較した。 ①オリゴデンドロサイトの分化に関わる転写因子(PDGFRalpha、Olig2、Nkx2.2)は6、7、8週齢のホモ型ラットにおいて、特に灰白質で減少した。②7、8週齢のホモ型ラットにおいて、神経細胞におけるミトコンドリアの免疫染色性が低下した。③ホモ型ラットの腹索においてみられる腫大したオリゴデンドロサイトの細胞質内にGolgiの免疫染色性の増強がみられ、また、ユビキチンの免疫染色性も増加した。 以上より、神経細胞におけるミトコンドリアの異常に伴い、オリゴデンドロサイトの分化・成熟・機能異常が生じ、その結果、ミエリン形成障害がおこっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
dmyラットの病態解析として、原因遺伝子のMRS2が主に発現する神経細胞に注目して解析を行い、興味深い動態を示す物質を発見した。この物質は、神経細胞の機能障害がどのようにミエリン形成細胞のオリゴデンドロサイトの障害につながっているかを考える上で大変興味深い。また、dmyラットの病変進展時に大きく発現上昇している遺伝子Xを突き止めた。遺伝子Xは、オリゴデンドロサイトの障害に関与している可能性があり、今後、詳細に検討していく予定である。 VFラットの形態学的な病態解析がほぼ終了し、その研究成果をBrain Research誌に発表した。現在は、我々が同定したVFラットの有力な候補遺伝子の機能を、in vivoおよびin vitroにて解析中であり、概ね研究計画どおり順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
dmyラットでは、ミトコンドリア機能異常と関連して、神経細胞内で異常な代謝を示すタンパク質を同定している。今後は、dmyラットの病変形成過程における当該タンパク質の定量的解析を行い、ミエリン崩壊病変における病理発生を明らかにしていく予定である。さらに、dmyラットの病変形成に連動して大きく発現上昇する遺伝子Xを追跡しており、リアルタイムPCRを用いた解析に着手した。この遺伝子Xのミエリン崩壊病変における役割を明らかにするため、in situ hybridisation法による発現細胞の動態を解析し、遺伝子Xに対する抗体を用いて、免疫組織化学、ウエスタンブロット解析を進める予定である。 また、ミエリン低形成と軸索周囲の空胞形成を特徴とするVFラットの病態解析を進めるとともに、VFラットの原因遺伝子の有力な候補として同定した遺伝子の役割について、in vivoおよびin vitroの解析を行っていく予定である。
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