2012 Fiscal Year Annual Research Report
石油希少時代のイネ栽培における地表根形成の有用性に関する研究
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23380189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 雅志 東北大学, 生命科学研究科, 産学官連携研究員 (40134043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇賀 優作 独立行政法人農業生物資源研究所, 農業生物先端ゲノム研究センター, 主任研究員 (00391566)
福田 善通 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, プロジェクトリーダー (40399374)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イネ遺伝資源 / 突然変異系統 / 地表根形成 / 不良土壌環境 / 量的遺伝子座解析 / 熱帯アジア地域 / 準同質遺伝系統 / 環境ストレス耐性 |
Research Abstract |
平成24年度は、1.地表根形成に関わる遺伝子が座乗している染色体領域が組み替えられた準同質遺伝系統(Near Isogenic Line; NIL)および地表根突然変異体を用いた塩害水田における栽培試験、2.それらの系統の1次根の水田土壌中の深度分布の解析、3.QTL解析により検出された地表根形成に関わる第7染色体上の領域に座乗する原因遺伝子の単離に向けた絞り込みおよび原因遺伝子の生理機能解析、4.地表根突然変異体の地表根形成に関わる原因遺伝子の単離および原因遺伝子の生理機能解析、5.熱帯アジアの国々で広く栽培されているインド型イネ品種IR64への地表根遺伝子の導入を計画した。 1.塩害試験水田における栽培試験については、平成24年8月から9月にかけて、降雨がなく渇水状態が続き、水田の塩処理濃度を制御が困難となり、地表根イネ系統への塩害の効果を比較できなかった。2.地表根の準同質遺伝系統および地表根変異系統の土壌深度分布を塩害水田および対照水田で調査した。3.QTL解析で検出された第7染色体のqSOR1の候補領域を当初の815kbより絞りこみ、候補となる遺伝子を1つに絞り込んだ。4.変異系統に関しては地表根形成の原因遺伝子を単離した。原因遺伝子が根の伸長方向を決める重力感受に関わることを明らかにした。これらの研究成果について論文にまとめ投稿した。5.熱帯アジアの国々で広く栽培されているIR64に交配によりqSOR1の導入をすすめた。さらに、リン欠耐性などの不良土壌環境耐性に関わるQTLの集積を交配によりすすめた。また、地表根突然変異系統が有している遺伝子の導入もすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不良土壌環境である塩害水田における地表根形成の有用性の検証試験を除き、地表根準同質遺伝系統の作出、地表根形成に関わる遺伝子の単離に関しては、順調に進展している。地表根の有用性が発揮できる熱帯アジア地域の不良土壌環境圃場での試験研究に向けて国際稲研究所との共同研究に関しても順調に進展している。特に、共同研究にむけて新たな研究課題として熱帯地域で栽培されているイネ品種への地表根遺伝子の導入をすすめることができた点が評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
日本国内のリンや窒素欠乏などの不良土壌環境圃場において地表根の有用性が見られるものと判断して研究を開始したが、圃場環境の整備がすすんでいる国内の圃場では、その有用性を検証しにくいことが分かった。しかし、津波などによる塩水の流入による塩害水田など問題水田における地表根の有用性が認められている。 したがって、灌漑設備などの圃場の整備が遅れ、施肥や農薬散布量などが制限されている南および東南アジアの国々の圃場においては、地表根の有用性が発揮できると判断された。研究の方向性を国外のより劣悪な不良不良土壌環境圃場向けに集約することとする。このため国際稲研究所をはじめてとして、東南アジアの問題圃場での検証試験を準備する。
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Research Products
(2 results)