2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23380193
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 勝也 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00283424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 英樹 山口大学, 農学部, 准教授 (90346578)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リン / 種子 / プライミング / コムギ / ダイズ |
Research Abstract |
コムギ栽培水田転換畑から採取した土壌(pH 4.9, トルオーグ可給態リン酸濃度 132.0mgP2O5/kg)を用いて、コムギ(品種:ニシノカオリ)に対するリン富化処理の影響を調査した。リン施肥レベルをポット当たり過リン酸石灰を0、0.19g、0.57g(順にP2O5として0、0.03、0.1g)の3段階を設けた。地上部乾物重においては、リン富化処理、リン施肥レベルおよび両者の交互作用、いずれにおいても有意な変動を検出することができなかった。コムギ(品種:あやひかり)を用いた圃場試験を実施した。圃場を1.0m×1.2mの12区画にわけ、それぞれの区画に苦土石灰、尿素、塩化加里を同量散布した。リン施肥については過リン酸石灰を施肥した区画と施肥しない区画をそれぞれ設け、種子はリン富化種子と無処理種子の2処理を用意した。収穫量を調査した結果、リン施肥の有無による差異が検出されず、リン施肥に対する応答を確認できなかった。一方、リン富化処理は地上部乾物重や収量を15%程度減少させた。これらの結果、リン欠乏でない圃場でのリン富化処理が負の影響をもたらす可能性が示唆された。 ダイズ種子のリン富化条件を探索した。0.2M のKH₂PO₄溶液では発芽率の有意な低下が検出されず、0.3M ではpHを7に調整した場合に著しく低下した。そこで、0.2MのKH₂PO₄溶液にダイズ種子を浸漬してリン富化種子を作成した。無処理種子との比較をコムギ後の圃場で試みた結果、リン富化処理ならびにリン施肥の有無によっても収量に有意な変化を確認できなかった。ダイズ種子に対するリン富化処理の影響を、異なるCO2濃度条件下でも検証したが、有意な変動を検出できなかった。以上の結果から、ダイズに対するリン富化処理は有効でない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初計画したスケジュールに沿って研究を実施できている。ただし、当初の期待された処理効果を十分に検出できていない。もちろん、ポジティブな効果だけが研究成果ではないので、ネガティブな面も含めた総合的な知見を得るよう研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
処理効果を十分に検出できない理由は、リン富化処理に伴う発芽の障害にあると思われる。特にダイズにおいては、発芽しても種子(子葉)が障害を受けた例をいくつか観察している。これは、種子を溶液に浸積させることで種子が急激に吸水して裂けてしまうためかもしれない。今後の課題として、種子を吸水させる際の方策を検討する。具体的には、溶液に浸積するのではなく、溶液を溶解させた寒天培地や濾紙上で緩やかな吸水を試してみる。
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