2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23380196
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
信濃 卓郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター生産環境研究領域, 上席研究員 (20235542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 圭毅 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター生産環境研究領域, 主任研究員 (40414750)
関口 博之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター水田作研究領域, 主任研究員 (50466009)
岩田 幸良 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所農地基盤工学研究領域, 主任研究員 (70370591)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多様性指数 / メタゲノム / 次世代シーケンシング / 病害土壌 / 一酸化二窒素 |
Research Abstract |
土壌微生物の多様性と土壌の機能性の対応付けのために二つの土壌を対象とした試験を行った。1つ目は連作障害に基づく病害土壌であり、土壌消毒を施す事により土壌微生物の生息数が一時的に大きく低下するが、その後の回復過程においては一部の菌が優先的に増加することが明らかにされた。この回復過程での微生物性がその後の病害の発生を左右している事が予想された。2つ目は凍結融解土壌における一酸化二窒素発生に焦点をしぼった解析を行った。北海道の土壌凍結地帯の圃場では、春先の融雪期に大量の一酸化二窒素が発生する事がこれまでも知られていたが、その実態は明らかにされていなかった。そこで、まずこの現象を再現するためのカラムを利用したミクロコスム試験を実験室内で行い、圃場状態と同様に実験室内で凍結融解を行った場合に一酸化二窒素を発生させる条件を見いだした。一酸化二窒素発生が最大になる時点の土壌に対して次世代シーケンサーを活用して,土壌中の微生物の各種配列(16S,および窒素関連遺伝子)DNAのアンプリコンシーケンシングを行った。その結果、一酸化二窒素の発生時に特定の微生物属の構成割合が高まることが見いだされ、また脱窒関連遺伝子においてもその構成割合に変動が認められた。このことは低温下で特異的に機能することが可能な微生物およびそれが持つ脱窒関連遺伝子が機能していることが推定された。現在、低温下で脱窒能を発揮できる微生物の取得を目指しており、次世代シーケンシングから得られた結果と適合するかの検討を進めている。また、このような著しいガス発生を引き起こしている土壌であっても、微生物の群集構造はいわゆる多様性指数からは説明がつかないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一酸化二窒素の発生をターゲットにした解析を進め、当初は圃場から採取した土壌での解析を中心に進めた。しかしながら圃場ではデータのバラツキが大きく、反復数を10以上に増やす必要があり、サンプル採取、分析、データ解析に遅延が生じている。その一報で、カラム試験を通じたミクロコスム試験では比較的安定的に凍結融解土壌で観察される一酸化二窒素の放出を再現する事が可能になり、この土壌を利用した各種分析が進展した。次世代シーケンサーによって得られた知見からは低温下でにおいても実際に一酸化二窒素発生に関与している微生物属が複数の候補種として推定され、この情報と実際に同条件の土壌で活発に生育可能な微生物が一致することが示されるかに興味が持たれる。そこで、Functional Single Cell法を導入し、微生物の単離を開始しており、比較的早い段階で良好な結果を得る事が可能であると判断されるためである。また、病害土壌においては実際の複数の農家圃場においても多様性の低下と復帰過程での微生物群集構造の歪みが病害菌の優勢を引き起こすことを示唆する結果であり、農業現場での微生物管理手法についての知見を集積している。
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Strategy for Future Research Activity |
低温下での微生物の機能的な役割と土壌微生物全体の多様性の関係を、さらに圃場のデータをあわせながら考察する必要がある。病害土壌を殺菌した場合に認められる現象のように、復活過程が凍結融解時にも該当するのであれば、微生物構造の歪みが一酸化二窒素発生においてのデータのバラツキを説明する要因になることが期待される。また、これらの結果はいずれも土壌微生物DNAの結果に基づいたものであり、より土壌微生物のダイナミックな変動を解析するためには土壌微生物RNAの解析も必須であると判断している。これまで畑土壌を用いた土壌微生物RNAの次世代シーケンサーを用いたメタトランスクリプトーム解析は国内ではほとんど成功してはいないが、すでに試験に用いるのに十分なRNAを採取可能な土壌を見いだしている事から、この土壌を利用した試験についても着手する。
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Research Products
(16 results)