2011 Fiscal Year Annual Research Report
IR/MAR遺伝子増幅法を核とした、革新的細胞工学技術の発展
Project/Area Number |
23380203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Field |
Applied molecular and cellular biology
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 典明 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (10216096)
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Keywords | 遺伝子増幅 / 細胞工学 / 染色体工学 / 遺伝子発現 / 染色体外遺伝因子 / Double Minutes / Homogeneously Staining Region |
Research Abstract |
(課題A)遺伝子増幅誘導能を指標として、2.7kbp・のβ-globin IRを、最短で1.0kbpにまで絞り込むことができた。このような配列には、AT-rich領域や強力なMAR活性を持つ配列が含まれていた。この結果を、β-globin IRについて複製開始能力を測定した先行論文の結果と比較した結果、大部分は重複したが、明らかに相違する点があった。さらに、絞り込んだ必要最小限なIR配列が、タンパク質医薬品生産などに汎用されているハムスターCHO DG44細胞でも遺伝子増幅を誘導することを見いだした。(課題B)IR/MAR法により、適用する細胞種によって均質で長大なHSRが形成されたり、ladder状のHSRや、非常に細かいfine ladder状のHSRが形成されたり、殆どHSRが形成されなかったりするという現象について、明確に理解した。さらに、その原因と形成機構について、増幅過程を経時的にFISH解析で検討した。その結果、遺伝子増幅の機構について、新規で重要な理解が示唆された。さらに、IR/MAR配列の存在によって、従来から知られていたdhfr-Mtx遺伝子増幅法が加速することを見いだした。(課題C)増幅した遺伝子が受けるエピジェネティックなサイレンシングを回避するゲノム配列を、IR/MAR遺伝子増幅法を基盤として、効率的にスクリーニングを行った。その結果、当初目的とする配列とともに、遺伝子増幅を支配する配列に関しても、複数種類得られた。これは、極めて重要な配列である可能性が高い(課題D)DMを供与細胞から受容細胞へ水平伝播させる際に、それを安定に維持できる細胞とできない細胞があるととを明確にすることができ、DMの水平伝播を検討する実験系の基盤を固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題AとDは、順調に計画が進行中であり、課題BとCについては予想以上に重要な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な方針は、すべて当初の計画から変更はない。具体的には以下の通り。(課題A)遺伝子増幅誘導能を持つ配列と複製開始能力を持つ配列は、大部分は重複したが、明らかに相違する点があった。この原因を解明することは、今後の課題である。そのために、様々な要素配列から遺伝子増幅を誘導する配列を再構築し、複製開始配列と比較検討する。さらに、そのようにして得られた増幅を指示する配列をもとに、抗体遺伝子/蛋白質をモデルとして、蛋白質生産系に応用する予定でいる。(課題B)IR/MAR配列の存在によって、dhfr-Mtx遺伝子増幅法が加速することの機構は大変興味深い。そのため、IR/MAR配列の存在によりなぜ遺伝子増幅が加速するのかを、両者を詳細に比較することにより明確にしてゆく。(課題C)増幅した遺伝子が受けるエピジェネティックなサイレンシングを回避するゲノム配列や、遺伝子増幅を支配する配列が複数種類得られたので、その再現性の確認と、その詳細な解析を行う。(課題D)DMを供与細胞から受容細胞へ水平伝播させる際に、それを安定に維持できる細胞とできない細胞について、さらに明確にするとともに、なぜ安定性が異なるのか、その機構を明確に理解する。その上で、DMの細胞間水平伝播を検討する。
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